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はやぶさが探査した小惑星「イトカワ」=JAXA提供

はやぶさが探査した小惑星「イトカワ」=JAXA提供

エンジンの故障をはじめ数多くのトラブルに見舞われながら、困難を乗り越えて地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)でプロジェクトマネージャを務めた、元シニアフェローの川口淳一郎氏は、小惑星からサンプルを持ちかえる世界初の試みを成功に導いた。川口氏の「仕事人秘録」の第1回では、はやぶさの成功に導いたJAXAの気風を語ります。

◇  ◇  ◇

はやぶさがトラブルを乗り越えて地球に帰還し、オーストラリア南部のウーメラ砂漠に着陸したのが10年前の2010年6月13日。カプセルが大気圏に突入してから30分ほどで、捜索したヘリコプターがカプセルを確認しました。発見・回収まで数日はかかると思っていたので、30分で発見したことには驚きました。

JAXA シニアフェロー 川口淳一郎氏

JAXA シニアフェロー 川口淳一郎氏

月よりも遠い小惑星まで往復して地球に戻るのは世界で初めてです。地球に戻る再突入も日本は経験がありません。はやぶさ本体からカプセルの分離はうまくいくのか、カプセルのパラシュートは開くのか、回収の位置を知らせる電波は出るのかなど、最後まで不安でした。電波が出た、と聞いたときはうれしいというより「うそじゃないか」と思ったほどです。

はやぶさの本来の位置づけは「工学技術の実証機」で、イオンエンジンなどの新技術の実証が目的です。宇宙でイオンエンジンを使って探査機を飛ばすのは初めて。小惑星への自動着陸や試料の採取なども初めての試みです。もちろん徹底的に準備はしますが、やってみないと分からないことも多い。どの要素もよくて80%、へたをすると50%くらいの成功確率と想定していました。私自身は、はやぶさが帰還してカプセルの回収までできる最終的な成功確率は40%くらいではないかと踏んでいました。

はやぶさは大きなリスクを冒す代わりに、成功すれば大きな成果が得られるミッションでした。政府も提案時点でイオンエンジンの抱えるリスクなどを承知で計画を承認しています。リスクを容認する考えがあったのだと思います。リスクを冒して挑戦する姿勢がなければ、新しいものは生まれません。はやぶさはエンジンをはじめさまざまなトラブルが発生しましたが、そこから逃げずに挑戦し続けたという意味でトラブルは勲章だと思っています。

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