電動車いす開発スタートアップのWHILL(ウィル、東京・品川)は、2021年4月8日から月々1万4800円(非課税)、期間無制限のレンタルサービスを始めた。電動車いすのレンタル料金としては破格の設定。背景には、コロナ禍で高齢者の外出率が著しく低下し、健康不安が増加していることがある。

WHILLの電動車いすは、従来のイメージと一線を画すデザイン性、走破性の高さなどに定評がある
WHILLの電動車いすは、従来のイメージと一線を画すデザイン性、走破性の高さなどに定評がある

 2020年4月に発令された1度目の緊急事態宣言後、シニア世代の「週5日以上の外出」は1年前と比べて約35%減少、友人・親戚宅への訪問回数は約76%も減少した――。

 このデータは全国65歳以上の男女を対象にして20年8月にWHILLが行った調査結果だ。新型コロナウイルス感染症の脅威が去っていない現在も、同様の傾向が想像される。高齢者の外出率の低下は、認知症の進行や、加齢により心身が衰えた状態を指す「フレイル」に陥る危険性を高める。

 散歩や自転車の利用など、健康で自ら活発に動ける人ばかりなら問題はない。だが、日本では約3600万人いる65歳以上の高齢者のうち、500メートル以上の歩行が難しいと感じている人は約1000万人おり、実に3人に1人の割合だ。実際、WHILLの20年8月の調査によると、こうしたシニアの歩行困難者はコロナ以前の1年前と比べ、「体の衰えを感じる」という回答が5割を超えたという。

 一方、ここ数年、全国で相次ぐ高齢者による暴走事故の影響で、従来“足代わり”の役目を果たしてきた自動車の運転免許証を自主返納する人が増えている。そこにコロナ禍が到来し、公共交通による移動をためらう高齢者も多いことから、免許返納が移動困難な状態を招く皮肉な結果になっている。

 本来、この歩きづらさを感じているシニア世代1000万人にマッチする移動手段が、徒歩以上、自転車、マイカー未満のポジションにある電動車いすだ。しかし、その国内市場は年間約2万5000台とごく僅かで、普及にはほど遠い。そもそも車両価格が40万円以上と高額なことや、「いつ入院してしまい、車いすが不要になるか分からない」といった先行き不安が購入をためらう要因となっている。そこで、WHILLは月々1万4800円(福祉用具のため非課税)という、割安な定額レンタルサービスを始めたわけだ。では、具体的な中身を見ていこう。

WHILLが始めた定額レンタルサービス「WHILLレンタル」。同社ホームページや電話で申し込み可能
WHILLが始めた定額レンタルサービス「WHILLレンタル」。同社ホームページや電話で申し込み可能

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