自衛隊式で悩みを解消 鍵は二者択一以外の「第3案」『自衛隊メンタル教官が教える 心をリセットする技術』

パワハラ上司がいる職場、食べ過ぎやネットショッピングといった悪習慣――やめたいのにやめられず、悩んでいる人は意外に多い。そんな「やめる・やめない」問題にうってつけの処方箋が本書『自衛隊メンタル教官が教える 心をリセットする技術』だ。どう問題と向き合えば心が晴れるのか、その手順が紹介されている。

著者は、陸上自衛隊でメンタル教官として、隊員たちの心のケアや指導、教育に従事してきた下園壮太氏。定年退職した現在は、メンタルレスキュー協会理事長を務め、カウンセリング技術の普及に尽力している。

「戦うか、逃げるか」以外の選択肢

「やめる・やめない」問題に着手する前に、やるべきことがある。それがエネルギーの回復だ。悩みがあると心身が疲弊する。エネルギーの低下は、自信の低下や不安の拡大につながり、身動きが取れなくなる要因になると著者は説く。だから、まずはとにかく眠る。生産性のあることは一切せず、ボーっとする。自衛隊時代の著者は、演習があったため土日に休めなかった。そのため毎週月曜日に半休を取り、エネルギーを回復するようにしていたという。

エネルギーケアができた上で、「やめる・やめない」問題を解決していくが、その秘訣は、とにかく急ハンドルを切らないことだ。無理なダイエットをするとリバウンドするのと同じで、失敗しやすい。

そこで著者が勧めるのが、「7~3バランス」という手法だ。「やめたい」を10、「やめたくない」を0とし、7~3くらいの中間案を選択する。これは、「戦うか、逃げるか」という単純かつ極端な2択ではなく、「第3案」を出すという自衛隊の戦術思考から生まれた考え方だ。

本書では、ブラック企業に勤める、下園氏のもとへカウンセリングに訪れたクライアントの例が紹介されている。過重労働でうつ状態になったAさんは、会社を辞めるか否か、決断できずに悩んでいた。著者が提案したのは、「転職サイトに登録する」「先輩に相談する」といった中間案を試すこと。しばらくするとAさんは、「現実はなかなか(再就職が)難しい」と気づき、実は今の環境はそう悪くないかも、と見方が変わったそうだ。最終的には、会社にいたまま自分の得意分野を開拓すると答えを出した。

7~3バランスは、「とりあえず」の行動を起こしやすくする。とりあえず行動すると、周囲の反応などから新たな気持ちや考えに気づくことがあり、それが解決への糸口となる。

そしてAさんのケースのように、必ずしも「やめる」ことがゴールではないと著者は説く。やめることに固執すると、本当に自分が望んでいるものが見えなくなるからだ。やめなくても心がリセットされて、鬱々としていた気持ちが軽くなったなら、それはそれで大成功なのだ。

どんな状況でも、二者択一だけではない解決策はたくさんある。「やめる・やめない」問題に向き合うことは、幸せに生きるための道を探すこと。本書に背中を押される読者は、きっとたくさんいるはずだ。

今回の評者=川上瞳
情報工場エディター。大手コンサルティングファームの人事担当を経て、書評ライターとして活動中。臨床心理士、公認心理師でもある。カリフォルニア州立大学卒。

自衛隊メンタル教官が教える心をリセットする技術 (青春新書インテリジェンス)

著者 : 下園 壮太
出版 : 青春出版社
価格 : 1,144 円(税込み)

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