専門家推薦 端午の節句に食べたい、かしわ餅10品
こいのぼりとともに端午の節句に欠かせないかしわ餅。販売は5月1~5日だけという店も多く、この時期ならではの季節商品だ。日持ちのしない生菓子なので地域限定も珍しくない。有名百貨店で手に入るお薦めを専門家に試食して選んでもらった。
まん丸の形状が美しい
独自に配合した餅粉と米粉をじか火で煎って、生地のつやと張り、歯応えを引き出す。「程よい弾力の生地で食感と味のバランスがとても良い」(吉岡久夫さん)、「あんも餅もしっかりめ。風味も強い」(藤田貴子さん)。かしわ餅の葉を開くとまん丸の球体の餅が現れ「菓子の造形が美しく見た目から特徴的。食べるとあんから豆の香りをしっかり感じることができる」(松本岳子さん)といった声もあった。(1)こしあん270円、みそあん292円(関東限定)(2)首都圏、近畿圏の主要百貨店(3)06・6203・7281(鶴屋八幡大阪本店)
地元米の餅にこだわり
西京味噌を使った「みそあん」、生地に古代米の赤米をついて入れた「粒あん」も。(1)こし、粒、みそあん各184円(2)東京・横浜、大阪・神戸・奈良、名古屋、滋賀県の主要22百貨店(3)0120・800・144
香り豊か、新茶に合う
野趣あふれる道明寺
生地は程よい弾力
尾張藩御用達だった桔梗屋の流れをくむ。「伝統的なハマグリ型の餅。香りが良く甘さの切れがいい」(金子恵里子さん)(1)こしあん292円(2)名古屋圏限定で6百貨店(3)0120・62・7581
生新粉と葛で作る生地は「やや厚みがあり弾力がある。葉の香りもすがすがしい」(平岩さん)(1)こし、粒、みそあん各216円(2)首都圏の百貨店(3)03・3571・3640(銀座あけぼの銀座本店)
創業時はきんつばで有名。「ほのかな塩味のあんは小豆を炊いたときの香りがする」(木田マリさん)(1)こし、小倉、みそあん各249円(2)高島屋と三越の日本橋店など9百貨店(3)0120・284・806
1716年創業。「餅の軟らかさとあんの甘みが程よい」(山本諭さん)(1)こし、粒、みそあん各216円(一部店舗で異なる)(2)伊勢丹新宿本店、西武百貨店池袋本店など全国23百貨店(3)075・692・3622
室町時代後期に京都で創業した。「上新粉らしい団子系の香りがする好ましい皮」(久保香菜子さん)(1)こし、みそあん各303円(2)東京、横浜、大阪、京都、神戸の32百貨店(3)03・3408・4121(とらや赤坂本店)
表の見方 点数は選者の評価を換算したもの。カッコ内は本店所在地。(1)あんの種類と1個の消費税込み価格(2)販売する主な百貨店(3)問い合わせ先電話番号
■葉は子孫繁栄の象徴
端午の節句が男子の成長や立身出世を願うものになったのは江戸時代のことという。それまではヨモギやショウブで厄よけをする日だった。ショウブが武道や武勇を重んじる「尚武」に通じることから、身を守るよろいやかぶとを飾り、こいのぼりを立てる男の子の祝いになった。
その際にかしわ餅を食べるようになったのは、新芽が出るまでかしわは古い葉を落とさないことにある。「子どもが生まれるまでは親は死なない」ことに通じ、つまり「家督が途絶えない」「子孫繁栄」に結びつき、縁起のいい食べ物となったわけだ。
かしわ餅と並び、ちまきも節句に食べる定番の菓子だ。ちまきは餅や餅米をササの葉で巻き、イグサで縛ったもの。奈良・平安時代に中国から伝来し、都があった近畿で広まった。かしわ餅より歴史は古く、江戸時代後期の風俗・事物を記した「守貞謾(まん)稿」には、京阪では初節句にちまきを親族や親友に配り、2年目以降はかしわ餅を贈るという記述が残る。
◇ ◇ ◇
調査の方法 首都圏・関西・名古屋の主要百貨店のうち3店舗以上で取り扱いのある和菓子店から、試食会日に商品を調達できた27ブランドを選択。商品はこしあんか粒あん。味(あんと生地)、香り、外観からブランド名を伏せて専門家に試食、評価してもらった。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)
金子恵里子(製菓実験社社長)▽木田マリ(トータルフードアドバイザー)▽久保香菜子(料理研究家)▽下井美奈子(スイーツコーディネーター)▽下園昌江(お菓子研究家)▽平岩理緒(「幸せのケーキ共和国」主宰)▽藤田貴子(「日本料理教室 藤田」主宰)▽町田えり子(料理研究家)▽松本岳子(クオカプランニング商品開発部)▽宮澤やすみ(『おもてなしの東京手みやげ散歩』著者)▽山崎彩(和菓子研究家)▽山本諭(菓子ジャーナリスト)▽吉岡久夫(フードアナリスト)
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