高速バス大手のWILLER(ウィラー、大阪市)は、2021年5月以降に月定額5000円乗り放題のオンデマンド乗り合い交通「mobi(モビ)」のサービスを始める。東京・渋谷区、豊島区、京都府京丹後市を対象に順次展開を始め、25年までに60都市、90エリアに広げる計画。「コミュニティモビリティ」と銘打つmobiの新しさとは?

2021年3月9日に開催されたWILLERのイベントで、新サービス「mobi(モビ)」を発表する村瀨茂高社長
2021年3月9日に開催されたWILLERのイベントで、新サービス「mobi(モビ)」を発表する村瀨茂高社長

 ここ数年、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の実証実験が日本各地で行われてきた中で、オンデマンドの乗り合い交通サービスは新たな移動手段として脚光を浴びてきた。利用者がスマートフォンのアプリを通じて乗車予約をすると、同じ方向に行く複数の乗客を効率よくピックアップするルートをAI(人工知能)が算出し、それぞれを目的地に送るものだ。

 既存のバス停より多くのバーチャルストップ(仮想的な乗降場所)が設けられているため、利用者にとっては出発地や目的地近くで乗り降りでき、しかも自分の都合に合わせて車両を呼び出せる。交通事業者や自治体にとっても、効率的な運行で地域の“足”を維持しながらコスト削減を期待できることが、導入を後押ししている。

WILLERは21年3月8日から31日の期間で京都丹後鉄道の沿線エリアでmobiの実証実験を行っている
WILLERは21年3月8日から31日の期間で京都丹後鉄道の沿線エリアでmobiの実証実験を行っている

 そんな乗り合い交通サービスで今回、WILLER(ウィラー)は月定額乗り放題のサブスクリプションプランを核とした新機軸のサービスモデルを打ち出した。その背景には、コロナ禍をへて人々の暮らし方が大きく変化したことがあるという。リモートワークが浸透し、往復数時間におよぶ通勤、通学が毎日ではなくなったことで、自宅や周辺ですごす「可処分時間」が増えた。その結果、「これまでの会社の付き合いより、自分が暮らす地域の人々とのつながり、家族とすごす時間を充実させることが重要になっている」(WILLER社長の村瀨茂高氏)。

 そこでWILLERが展開を始める「mobi(モビ)」は、半径2キロメートルを目安にした生活圏をストレスなく移動できるようサービスが設計されている。気軽に出かけやすくし、域内の移動総量を増やすことで地域経済の活性化も狙う。狭いエリアをカバーするmobiは、路線バスやタクシーといった既存の公共交通とは異なるポジションで、「ライバルはマイカーと自転車」(村瀨氏)。では、どんな仕掛けがあるのか。

サブスク乗り放題だけじゃない驚きの仕掛け

 まず、mobiの特徴である月定額料金は、本会員となる人が月5000円、同居家族は1人当たり月500円の追加で利用できるようにする。親子2人なら月5500円(1人当たり2750円)、家族5人なら月7000円(同1400円)という具合で、設定された2キロメートル範囲が乗り放題になるから、経済的な負担を抑えながら気兼ねなく利用できる。

 例えば、日々の買い物に自転車で出かけていた人は、mobiの利用で重い物でも気兼ねなく購入できるし、雨の日も移動がおっくうにならない。近所のmobi会員と連れだってなじみの飲食店に行ってアルコールを飲んだり、子供が塾に行く際に親がmobiの車両を呼び出して送り届けてもらったりすることも可能だ。

月定額で乗り放題のプランを提供する。同居家族で加入すると、より割安感が出る仕組み
月定額で乗り放題のプランを提供する。同居家族で加入すると、より割安感が出る仕組み
スマホで車両を呼び出してから、10分以内で到着する
スマホで車両を呼び出してから、10分以内で到着する

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