STORY 大和証券グループ vol.6

人とつながる 可能性が生まれる ピンチをチャンスに変えるヒント

大和証券グループ従業員組合 事務局長
徳弘 恵子さん

大和証券グループ従業員組合。徳弘恵子さん(33)は75年の歴史を持つ労働組合で活動の要となる事務局長を務める。営業店、企業の資金調達などをアドバイスする部門、事務やシステムを担う部署。さまざまな職場の従業員をつなぎ、声を聴き、会社と向き合う。グループ各社を含め、国内外数千人の組合員と直に顔を合わせる対話を原動力としてきたスタイルは、新型コロナウイルス感染症の流行で一変した。長い伝統をいかにつないでいくか。新たな方法への挑戦を重ねるなかで見えてきたのは、ピンチをチャンスに変えるヒントはいつも、人とのつながりにあるということだ。

進化するキャラバン

「きょうも、別の者が進めています」。事務局長の仕事を説明しながら、徳弘さんはふと笑顔を見せた。大和証券グループ従業員組合が力を入れる「キャラバン」に話題が及んだときのことだ。

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徳弘恵子さんは事務局長として組合活動全般に目配りする

事務局長は組合の運営が円滑に進むよう、執行部の各担当者とやり取りしてさまざまな活動を指揮したり、スケジュールを管理したりするのが仕事。全体の状況を見る立場だが、組合員と直接対話する機会がある。支店をはじめ全国の職場を順に訪ね、組合員の生の声を聞き取り、取りまとめて支店長などに伝える「キャラバン」。従業員と会社の架け橋となる組合の核となる活動だ。

コロナ禍の前は、月に15~20カ所の支店などを実際に訪ね、そこで職制ごとにグループ面談を実施していた。感染対策で対面が難しい今はオンラインで、1対1でヒアリングする方法をとる。15分の面談を1日に20件こなすことも。この日は別の執行委員が担当していたが、週に1~2回程度、徳弘さんも自ら対応する。

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オンライン化しても内容の濃い「キャラバン」ができるよう工夫を凝らす

このスタイルにたどり着くのは簡単ではなかった。総合証券会社として国内だけでも約180に上る支店・営業所を持つ同社。平時は執行部のメンバーで手分けして、1年半~2年かけて全国をめぐり、海外にも聞き取りに行く。「対面での対話を組合活動の根本に置いていた」が、昨年3月にはコロナの感染拡大でほぼ訪問できない状況に陥り、「組合の存在意義が失われると思った」。

執行部で話し合い、まずはオンラインで各職場とつないでグループ面談を続けることにした。しかし対面ではスムーズだったヒアリングがなかなかうまくいかない。キャラバンでは労働時間の管理や職場環境に関するテーマだけでなく、若手であれば顧客の新規開拓の調子、課長代理などの中堅の世代には支店の方針に対する考え方、ベテラン層にはこれからどんなスキルを習得したらいいか、といった具合に一人一人きめ細かく話を聞き取っていく。だがパソコン画面を隔てると、グループの中で発言しにくくなってしまうようだった。

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執行部では日々さまざまなテーマについて活発に意見を交わす

さらに執行部で議論し、1対1で話し合う方式に切り替えた。事前アンケートも導入。職場の雰囲気や個人の話などをあらかじめ聞いておき、課題意識を持って対話することで、面談時間が短くてもたくさんの声を引き出せるようにした。オンラインにしたことで在宅勤務中や外出中でもキャラバンに参加できるようになり、1対1のスタイルも「話しやすい」と好評。試行錯誤を続けながら、徳弘さんは確かな手ごたえを感じている。

「社長賞のMVP」

徳弘さんは2018年10月に組合専従の役職に就くまで、京都支店で営業の最前線に立っていた。実はここでも、仕事のスタイルを大きく変える経験をしている。

京都に移る前は、入社以来、銀座支店の営業として新規開拓を担当。競合他社も多い土地柄で、いかに新たな取引を獲得するか。まずはできる限り多くの会社に電話をかけ、アポを重ね、地道に関係づくりに取り組んだ。

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入社以来、支店でリテール営業に打ち込んできた

大変さはあったが、銀座は伝統ある企業も多く、「経営者が苦労を乗り越えて、会社を大きくしてきた体験談を聞くのが純粋に楽しかった」。好奇心を武器にコミュニケーションを深め、仮説を立てて検証するようにして、どう顧客の役に立てるか、必要とされるか、イメージをふくらませた。予想していたような相場の変動や、興味を持ちそうな新規株式公開(IPO)の案件が出るなど「ここぞ」というときは、どこよりも早く訪問や電話といったアクションをとることを徹底した。

入社4年目のある日。オフィスで仕事をしていると支店長に呼ばれた。「社長賞のMVPに選ばれたらしいよ」。何気ない口ぶりの知らせだったが、内心飛び上がりそうだった。MVPは営業部門で半期に1度の社長賞を受賞した中から、特に多く賞をもらっている人が選ばれる。入社から積み上げてきた工夫が報われた瞬間だった。

入社7年目に京都支店へ。新規開拓ではなく、すでに口座を持つ既存顧客の担当となった。「東京でのやり方ではうまくいかないんだろうな」。覚悟はしていたが、何度アポでコミュニケーションをとっても、スピードを意識して素早く電話やメールをしても、なかなか距離が縮まらない感覚に戸惑った。

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様々な営業スタイルがあることを学んだ

ヒントになったのは、東京で法人営業担当として働いている先輩。ある日、関西地方で開催されるマラソン大会の応援に誘われた。「担当のお客さまが出場するから一緒においで」。当日、見事に完走した先輩の顧客は、遠方から応援に駆け付けたことを大喜びしてくれている。

「こういうつながりのつくり方もあるのか」。相手の懐に入る行動力に刺激を受けた。深く付き合うには、喜んでもらうには。顧客の呉服店が開く着付け教室に通うなど、これまで思いもしなかった方法を試すうち、顧客同士の会合に呼んでもらえるようになるなど少しずつ関係づくりが前に進み始めた。

組合専従の役職の声がかかったのはそんなときだった。マラソン大会の先輩は、組合が主催する新入社員向けの伝統行事「キックオフミーティング」で知り合った。自分が成長する突破口となった先輩とのつながり。「今、それを私たちがつくっていかなければいけない」。新たなフィールドへの挑戦を決意した。

成長の源泉は力を合わせること

人とつながることで見えるものがある。そう確信したのは、昨年12月に証券大手3社で女性活躍をテーマとして開いたオンラインミーティングだ。各社とも女性管理職比率などの目標を掲げていたものの、現場では課題も感じていた。キャラバンでも「マネジャーになる自信がない」という女性の声が聞こえることがあった。他社の組合に専従の役職を務める同世代の女性がいたことで、こうした課題をともに乗り越える横のつながりをつくれるようにと、共同イベントの開催を決めた。

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女性の活躍が進む同社では執行部に女性も増えている

参加者は、会話しやすいように入社5~10年の女性にそろえた一方、個人営業、法人営業、投資銀行業務などさまざまな分野の組合員に声をかけた。プログラムも、各社の取り組みを紹介するプレゼンテーション、男女格差の度合いを示すジェンダーギャップ指数の現状を知る座学、これからの施策を考えるディスカッションをバランスよく配置。大和証券では札幌や大分からも参加でき、「オンラインならではだった」。

このミーティングを通じて改めて気づいたのは、大和証券グループは女性活躍の環境が整っているということだ。これを力に変えていこうという思いを新たにしたと徳弘さんは話す。

就職活動で大和証券を訪ねたきっかけは、「母が働いていたことがあると聞いたから」。どういう会社か興味をもち、セミナーや説明会で感じた「男女関係なく、やればやるだけ成長できるフェアな風土」という印象は、入社してからも変わらなかった。

従業員が自分らしく強みを伸ばし、力を合わせることが会社の成長につながる。今は組合事務局長としてその手助けができることにやりがいを感じている。「いろんな先輩、上司、後輩、お客さまとかかわってきて成長させてもらった」。その環境を整え、「自分もできると誰もが思ってもらえたら」。徳弘さんはつながりのバトンを未来へと受け渡す。

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誰かの力になることで、「自分も一歩ずつ前進していきたい」

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