粉末洗剤から液体へ 「外様」の危機感、ご法度破る花王 長谷部佳宏社長(下)

研究所では時代の流れに乗り遅れるという危機感から液体洗剤を開発した(長谷部氏は左端)
研究所では時代の流れに乗り遅れるという危機感から液体洗剤を開発した(長谷部氏は左端)
■幹部候補が集う研修をリード。

化学品事業の仕事をしていた2007年、将来の幹部候補を集めた「経営課題研究会」という社内研修に参加しました。各人が経営課題を考えて解決策を提案するというものです。花王はシャンプーなど、水に縁がある商品を多く手がけています。水との付き合い方を変える商品をつくりたいと考え、言い出しっぺの私が6人のチームを率いることになりました。

研修は9カ月に及びました。発表は思いのほか好評で、当時の後藤卓也会長から直筆の手紙をもらいました。「具体的な研究テーマを設定し、ぜひとも頑張ってくれ」。翌年、洗剤を扱うハウスホールド研究所に室長として異動し、実行に移すことになりました。47歳の時でした。

■粉末洗剤から液体洗剤へ、あつれき生む。

今でこそ液体が主流ですが、当時の花王の洗濯用洗剤は粉末が中心でした。米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の「アリエール」が猛威を振るい、市場の流れは完全に液体洗剤に傾いていました。それでも花王の柱である洗剤分野で、粉末を差し置いて液体をつくるのはご法度とされていました。

花王のシェアは当時50%を超えており、新たな挑戦よりも現状のことで精いっぱいという状況でした。

研究部門は10個中3個成功すれば大勝利です。生産部門は対照的に、10個中8個なら敗北です。9個、あるいは10個すべて成功させなければなりません。「30%の確率で成功するからやりたい」と研究者が言っても、生産部門の理解はなかなか得られませんでした。

■事業が傾く危機感、挑戦を促す。

洗剤の世界では、私は経験のない「外様」です。生産部門の人からは「君は素人だ。私の言うことを聞いておいた方がいい」と反論も受けました。ですが、このタイミングで液体洗剤に移行しなければ時代の流れに乗り遅れるという危機感が勝りました。「申し訳ないが、絶対に液体洗剤をつくるべきだ」「いや、君は何もわかっていない」。研究と生産で何度も議論を交わしました。最終的には熱意に負けたのか、理解を示してくれました。

花王は方向性を決めたら一気に進む会社です。研究の仲間たちは実験の大部分を液体洗剤に費やしました。そうして生まれたのが「アタックNeo(ネオ)」です。従来2回必要だったすすぎを1回にして、水の使用量を減らしました。

外様だからこそ、メンバーの意見をしっかり聞こうと努めました。一生懸命仕事と向き合う人の話には、必ずアイデアのヒントがあります。この考えは社長になった今も変わりません。

あのころ……

温暖化ガスの削減を目指した京都議定書が2005年に発効し、気候変動や環境問題への関心が高まった。日用品メーカーも商品の機能だけでなく、プラスチック使用量の削減など企業としての姿勢が問われるようになった。

[日本経済新聞朝刊 2021年3月9日付]


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