さまざまな業界でデジタル化が求められる昨今だが、広告業界もその例外ではない。そうした中にあって、広告メディアの次世代モデル「AaaS(Advertising as a Service、アース)」を提唱し、デジタル広告の変化に向けた新たな取り組みを推し進める博報堂DYメディアパートナーズ(東京・港)は、どのような形で新しい広告ビジネスのあり方を実現しようとしているのだろうか。同社の矢嶋弘毅社長に話を聞いた。(聞き手は日経クロストレンド編集長・吾妻拓)

博報堂DYメディアパートナーズ社長の矢嶋弘毅氏。1984年一橋大学社会学部卒業後、博報堂入社。96年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム社長、2011年博報堂DYメディアパートナーズ取締役を兼務、16年D.A.コンソーシアムホールディングスの設立に伴い会長に就任。17年現職に就任。20年博報堂DYホールディングス副社長を兼務
博報堂DYメディアパートナーズ社長の矢嶋弘毅氏。1984年一橋大学社会学部卒業後、博報堂入社。96年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム社長、2011年博報堂DYメディアパートナーズ取締役を兼務、16年D.A.コンソーシアムホールディングスの設立に伴い会長に就任。17年現職に就任。20年博報堂DYホールディングス副社長を兼務

コロナ禍の影響からは回復傾向に

編集長・吾妻 拓(以下、吾妻) 電通が2021年2月、20年の日本の広告費が前年比88.8%の6兆1594億円になったとの推定を発表しました。新型コロナウイルスの影響はどの程度ありましたか?

矢嶋 弘毅氏(以下、矢嶋氏) 20年度の前半はすごく厳しかったですが、後半は伸びる業種も出てきました。業種的にいい会社はすごく良くて、全てがマイナスの影響を受けているわけではないのですが、やはり「コロナ7業種」といわれている業種(飲食、宿泊、陸運、小売り、生活関連、娯楽、医療福祉)は結構厳しかったように思います。

吾妻 直近で広告の出稿は増えてきているのでしょうか。

矢嶋氏 20年4月から5月にかけての緊急事態宣言以降、広告市場はまずデジタルから、その後テレビ、新聞といった順で回復していきました。一時はデジタル広告が市場全体の7割くらいを占める状況でしたが、新聞や雑誌なども7~8割程度回復していて、現在デジタル広告が全体に占める比率は5割弱くらいになっています。

 デジタル広告が伸びるときに、他メディアの広告も伸ばせる広告会社は強くなると思っています。デジタルが伸びるときにその流れについていけないと、他のメディア広告も売れなくなってしまうと以前から言ってきたのですが、まさにそのような状況になっているように思いますね。

吾妻 博報堂DYグループで、メディア広告を担当するのが、博報堂DYメディアパートナーズなのですね?

矢嶋氏 弊社の基本的な事業内容はメディアおよびコンテンツビジネスの取扱業務です。もともと弊社は博報堂や大広、読売広告社のメディア部門を統合した企業ですので、弊社がメディアおよびコンテンツの仕入れ部門で、博報堂などがそれを販売する部門という関係性になります。

 これまでは、主にメディアの広告枠の仕入れなどに取り組んできたのですが、運用型広告が広がってきたことで、クライアントからは「広告効果を最大化したい」というニーズが高まっています。広告会社に求められる基準は変わってきていると感じます。

運用型広告の台頭に対する危機感で生まれた「AaaS」

吾妻 これからデジタル広告をどう伸ばすかという時期に、広告メディアの次世代ビジネスモデル「AaaS」を打ち出しました。

矢嶋氏 AaaSの最初の構想は2年半くらい前からあり、その半年後くらいにはチームを立ち上げました。なぜAaaSを考えたのかというと、広告ビジネスのあり方が大きく変わってきているからです。

 従来、広告会社やメディアのビジネスモデルは予約型広告を前提に作られてきましたし、それはテレビもデジタルも同様です。私もDAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)の設立に携わり、デジタル広告の予約型モデルを作ってきましたが、その後、運用型のモデルが急伸しており、デジタル広告に関しては、これまで以上に運用型広告の比率は高まっていくと思っています。

 それでも1~2割くらいはデジタルでも予約型広告が残っています。またテレビのスポットCMは予約型が主流ですが、今後運用型広告に近い取り扱いもできると考えています。運用型と予約型という広告の関係変化に対応できる体制にするため、システムやビジネスモデル、データなどのあり方をどうすべきかと考えた到達点が、AaaSなのです。

「AaaS」というモデルを提唱してメディア投資効果の最大化を目指す(博報堂DYメディアパートナーズの資料より)
「AaaS」というモデルを提唱してメディア投資効果の最大化を目指す(博報堂DYメディアパートナーズの資料より)

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