声、しぐさ、表情で損をしない 好印象を演出するコツ『あなたはなぜ誤解されるのか』

貧乏ゆすりをする、キーボードの音がうるさい……どんなに仕事ができる人でも、ちょっとしたしぐさによってマイナスの印象を与えてしまうことがある。「残念な人」にならないために、どうすればいいのか。

本書『あなたはなぜ誤解されるのか』が強調するのは、自己演出の大切さだ。それも文字や声で発信する言語情報だけでなく、「非言語情報」に気をつかうべしと説く。非言語情報とは、振る舞い、声、表情、しぐさ、タイミングも含めた「広義の見た目」のこと。自分が伝えているつもりのことと、相手が受け取っていることとのギャップを生むのは、多くがこの非言語情報に関わってくる。

著者の竹内一郎氏は、劇作家、舞台演出家として知られ、現在、演劇集団ワンダーランド代表。著書にベストセラーとなった『人は見た目が9割』がある。本書では、世阿弥の「序破急」から、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションまでエピソードを豊富に例示しながら、自己演出のさまざまな方法と心構えを教えてくれる。

年齢や立場が意味すること

著者は受け持っている大学のゼミで、あることに気が付いた。40代のときには通用した「冗談っぽく話せば通じた冗談」が、60代になり、通じなくなったのだ。学生にとって自分の一言が重くなっていること、それに応じた振る舞いに変える必要性を、悟ったという。

このように非言語情報(著者の場合は年齢や立場)はコミュニケーションで多くの意味を持っている。その扱いに長じるようになるには、仕事や人生の局面で「役割(ロール)」を意識して行動するのが有効だと説く。

例えば会議では、「穏やかに話すロールをやろう」と決め、穏やかに話せるときだけ発言する。他人とぶつかりがちな人は「あまりしゃべらないロール」をやってみる。冒頭の、貧乏ゆすりのような「動き」と「音」に関する癖は人を不快にさせやすいが、所作の奇麗な俳優の役を演じていると考えれば、おのずと減ってくる。やるべきことを「ロール」と考え演じることで、その局面にふさわしい振る舞いや話し方ができ、自己演出につながると著者は説明する。

役になりきることの効能はメンタルにも及ぶ。仕事で失敗をすると、自分が全否定されたように感じるが、「ある局面の役柄を否定されただけ」と考えれば切り替えも早くなる。

相手の目を見て話す

「よい芝居」が受信と発信の相互作用でつくられるように、コミュニケーションにおいても「受ける」「返す」ことが重要だと著者はいう。だから、例えば返事をする時に、アイ・コンタクトを入れるといいそうだ。相手の目をしっかり見ることで、言外に「受けとったよ」というメッセージを伝えられる。

「受け芝居」ができる役者として名が挙がるのは、岸部一徳や小日向文世など一流の「脇役」たちだ。つまり、自己演出とは自己主張をすることではない。周囲をよく見て、言葉以外でもキャッチボールを行うことなのだ。日ごろのコミュニケーション、振る舞いを見直すきっかけとなる一冊である。

今回の評者 = 倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

あなたはなぜ誤解されるのか~「私」を演出する技術 (新潮新書)

著者 : 竹内一郎
出版 : 新潮社
価格 : 858 円(税込み)

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