個性的な「クラフト酒」の波は、ウイスキーのジャンルにも押し寄せている。2020年は特に当たり年で、期待の新蒸留所から瓶詰めされた製品が相次いで発売された。特に、堅展実業・厚岸蒸溜所の「厚岸 シングルモルトウイスキー 寒露」、ガイアフローディスティリングの「ガイアフロー シングルモルトウイスキー静岡 プロローグK」は、限定品ながら即完売。ルーキーが勢力図を塗り替える。

※日経トレンディ2021年3月号の記事を再構成

北海道の広大な自然の中に構える「堅展実業・厚岸蒸溜所」
北海道の広大な自然の中に構える「堅展実業・厚岸蒸溜所」

前回(第12回)はこちら

 小規模な醸造所や蒸留所で造られる個性的な「クラフト酒」がトレンドを大きく動かす昨今。ビールだけでなく、ウイスキーにもその波は押し寄せている。2020年は特に当たり年だった。複数の新しい蒸留所が16〜17年に仕込んだ原酒が、スコッチの規定でウイスキーと認められる熟成期間3年を超え、瓶詰めされて相次ぎ発売された。

 筆頭は、北海道東岸にある堅展実業・厚岸蒸溜所。堅展実業はもともとは主に食品の原材料を輸入販売する商社だが、樋田恵一社長がスコッチの聖地であるスコットランド・アイラ島のウイスキーのファンで、自社でも造りたいと新規参入した。場所を厚岸町に決めたのは、冷涼で潮風、海霧が発生する気候がアイラ島に似ていたからだ。蒸留器や発酵槽など主な設備は名門フォーサイス社から導入した。蒸留前のもろみ作りでは、通常2〜3日の麦汁の発酵を5日と長めにして乳酸による発酵も促す。結果、甘みと濃厚なコクの酒質になる。

 20年10月発売の「厚岸 シングルモルトウイスキー 寒露」は、限定1万5000本が即日完売。今後、シリーズ化して約3カ月ごとのハイペースで味の違う商品を二十四節気の名称を付けて発売する計画で、21年2月末には第2弾の「厚岸 ブレンデッドウイスキー 雨水」が登場。また、21年中に蒸留所周辺の湿原から採れる泥炭(ピート)を使って、北海道産の麦芽を燻(いぶ)して乾燥させる、本場アイラ島の技法を用いた製麦を開始するという。スモーキーなウイスキーは人気を呼びそうだ。

堅展実業/厚岸 シングルモルトウイスキー 寒露
堅展実業/厚岸 シングルモルトウイスキー 寒露
参考価格1万6500円(700ミリリットル・税込み)

NIKKEI STYLE

2
この記事をいいね!する
この記事を無料で回覧・プレゼントする