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コロナ禍に直面した日本で社会福祉を向上するためにできることは

コロナ禍に直面した日本で社会福祉を向上するためにできることは

私たちの健康は微妙なバランスの上に成り立っている。栄養や生活習慣だけではなく、リーマン・ショックや東日本大震災、コロナ禍のような社会の大変動もまた、多くの人々を脅かす。今回紹介する『日本人の健康を社会科学で考える』では、経済学者が統計データを使って健康に影響を与える社会的な要因の分析を試みた。社会課題の解決に関心のある若い世代にヒントを与えてくれる一冊だ。

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小塩隆士氏

小塩隆士氏

著者の小塩隆士氏は1960年京都府生まれ。1983年東京大学教養学部卒業。大阪大学博士(国際公共政策)。経済企画庁(現内閣府)などをへて、2009年より一橋大学経済研究所教授。2017年~19年に一橋大学経済研究所長を務めました。2010年に『再分配の厚生分析 公平と効率を問う』で日経・経済図書文化賞を受賞しています。主な著書に『社会保障の経済学』『教育の経済分析』『「幸せ」の決まり方 主観的厚生の経済学』『くらしと健康』があります。

非正規雇用のリスクは2割高い

非正規雇用が健康に何らかの影響を与えるかどうか知るために、著者は厚生労働省の「国民生活基礎調査」のデータを使ってサンプルA(約46万人)、サンプルB(約3万7000人)の2つ集団を対象に調べています。調査にあたって3つの変数に注目しました。第1は主観的な健康感です。自分の健康状態を「よい」「まあよい」「ふつう」「あまりよくない」「よくない」の5段階で判断してもらう調査の結果を使用しました。第2は自覚症状があるかどうか。「あなたはここ数日、病気やけがなどで体の具合が悪いところ(自覚症状)はありますか」という問いへの答えを用いています。そして第3は日常生活の活動面で支障があるかどうかです。「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何らかの影響がありますか」という問いに「ある」と答えたかどうかを調べたデータを分析しました。

結果は、「大まかに言えば、健康がよくない状態になるリスクは、非正規雇用者は正規雇用者の二割程度高くなるようだ」というものでした。

 なぜ、そうした結果が得られたのだろうか。とりわけ、所得面の影響を取り除いても非正規雇用者が健康面で不利な状況に置かれているのには、二つの理由が考えられる。第一は、就業形態の不安定性である。低賃金であることは当然つらいが、それに加えて雇用が将来にわたって保証されていない状況は精神的にこたえる。
 第二は、セーフティーネットから外れるリスクである。正規雇用者であれば、社会保険料は給料から天引きされ、厚生年金や組合健康保険など被用者保険によるセーフティーネットの枠組みの中にとどまれる。しかし、非正規雇用者の場合、短時間労働であれば、被用者保険の適用対象外になる確率が高くなる。
(第2章 非正規雇用を健康面から評価する 71ページ)

もちろん、国民年金や国民健康保険などに加入すれば問題はないですが、低所得のために保険料が支払えずにセーフティーネットから外れるリスクが高くなります。リスクに自分自身で備えるしかないという状況に置かれることも、就業形態が不完全であることと同様に、精神的によくないと言えるでしょう。

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