「超高層ビル」に憧れ 安全管理の重み実感しつつ精進鹿島 押味至一社長(上)

おしみ・よしかず 74年(昭49年)東工大工卒、鹿島入社。05年執行役員、10年専務執行役員。15年から現職。神奈川県出身。71歳
おしみ・よしかず 74年(昭49年)東工大工卒、鹿島入社。05年執行役員、10年専務執行役員。15年から現職。神奈川県出身。71歳
■鹿島の押味至一社長(71)は映画に憧れて進路を決めた。

建設会社を選んだきっかけは、霞が関ビルの建設を描いた「超高層のあけぼの」という映画です。強い憧れを抱き、当時通っていた大学を辞めてしまったほどです。東京工業大学に入り直して建築を修め、霞が関ビルを施工した鹿島に入社しました。

横浜支店に配属され建築現場を担当していたある年のクリスマスイブ、生涯忘れられない事件が起きました。後輩と仕事をしていたところ、看板を取り付けにきた協力会社の方が高所から転落したのです。急ぎ救急車を呼んで同乗したのですが、病院に到着したときには既にお亡くなりになっていました。人の死に直面する仕事なんてそうそうありません。安全管理の重みを痛感しました。

■1989年、40歳で課長に相当する現場所長となる。

初めて任されたのは、神奈川県内のオフィスビルでした。肩書は立派ですが部下がいない「1人所長」の現場です。まずは事務を担当してもらう女性などを雇うところから始めました。

工期は1年程度で、過去の経験からも問題なくこなせると考えていました。でも実際にやってみると大変です。1人なので複数の職人さんとの連携に時間がかかる。当時珍しかったテレビ電話を現場に導入しました。効率化できた一方で予算を圧迫し苦労しました。

建築現場では、協力会社の職人さんがいなければ何も作れません。所長は安全管理でも全責任を負いますが、思い通りにはいきません。事故を防ぐために試行錯誤が続きました。

■地域社会との密なコミュニケーションが窮地を救う。

近隣住民の方々と良好な関係を築くことも、所長の大事な仕事です。毎朝工事が始まる前に現場周辺の掃き掃除をしていると、近隣のみなさんとあいさつができるようになる。こうした何気ないコミュニケーションが、いざというときの助けになります。

現場で仮設の足場を解体しているとき、とび職さんが鉄パイプを固定する金具を落としたことがあります。それが工事現場の隣にあった乾物屋さんの屋根を直撃し、穴を開けてしまいました。幸いけが人はなく、すぐに頭を下げて修復工事を進めました。この乾物屋さんとは毎朝の掃除を通じて良好な関係を築けていました。だからこそ、丸く収めることができたのでしょう。

その後も経験を重ね、ついに超高層ビルを担当できることになりました。映画を見て以来、20年越しの念願がかなったわけです。待っていたのは高度な技術を駆使する、非常に難しい現場でした。

あのころ……

1980年代からのバブル経済で国内建設投資は急速に膨らんだ。民間投資が中心の建築工事は90年度には52兆2000億円となり、5年前と比べて20兆円以上増えた。この年を境に投資額は減少に転じ、建設業は「冬の時代」に突入していくことになる。

[日本経済新聞朝刊 2021年2月16日付]


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