震災10年、原発廃炉の今 難易度高く計画に遅れも

サッカー施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)は本来の目的での利用が再開した
サッカー施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)は本来の目的での利用が再開した

東日本大震災からまもなく10年となるわね。大事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所の廃炉作業は順調に進んでいるのかしら。処理水の問題が深刻と聞いたけど、どうなっているのかな――。廃炉作業について、長井美有紀さんと熊切京子さんに安藤淳編集委員が解説した。

長井さん「現地はいまどんな様子ですか」

2011年3月の大地震では1~3号機でほぼ同時に燃料が溶け落ちるメルトダウンが起き、前代未聞の事故となりました。11年12月に現地に行くと、がれきや壁にたたきつけられた車、横倒しになった重機、むき出しの配管などが目に付き、混乱していました。敷地内の放射線量は高く、防護服が不可欠でした。

今では見違えるほど整然としており、原子炉周辺の一部を除き約96%は防護服が不要になりました。廃炉作業の前線基地として作業員宿舎や放射能の検査用テントが並んでいた近くのJヴィレッジも、ホテルが開業しグラウンドの芝が再生されてサッカーの練習に使われています。

熊切さん「廃炉作業は順調ですか」

政府と東電が作る中長期ロードマップに沿って30~40年計画で進めています。現在はデブリと呼ばれる溶け落ちた燃料の取り出し開始までを含む「第2期」の途中です。

作業は遅れています。たとえば原子炉建屋上部のプールに保管してある使用済み燃料の取り出しは、3号機では14年末を計画していたものの、19年4月にずれ込みました。機器の故障などでたびたび中断していますが、最新の計画では20年度中の取り出し完了をめざしています。

どの作業も放射性物質が飛散しないよう慎重さが求められます。問題があればその都度立ち止まり、改善を加えながら段階的に前へ進むやり方が好ましいという点で関係者の見解は一致しています。

長井さん「処理水の問題はどうですか」

処理水は放射性セシウムやストロンチウムなどを専用装置で除去した後の水ですが、トリチウムという物質は取り除けません。汚染水の発生量は20年実績で1日あたり約140トンです。処理水は捨てずにすべてタンクにためています。その数実に1千基を超えました。東電はタンクを増設していますが、廃炉作業に必要なスペースを考えるとあと137万トン分が限度で、22年夏にも満杯になりそうです。

トリチウムは水と似た物質で、通常の原発からも出ており基準濃度を下回るまで薄めて海に流しています。経済産業省の委員会は20年2月、処理水の海洋放出が他の方法に比べ「より確実」とする報告書をまとめました。ただ、処理前の水にはデブリに触れた高濃度の汚染水が含まれ、一般の原発とは異なるとして地元の抵抗が根強いのが実情です。特に漁業関係者は、いま放出されたら風評被害で打撃を受け、これまでの努力が水泡に帰すと警戒しています。

政府、東電と地元との対話が不十分だったのは否めません。もっと前から風評対策や補償の方法を含め、しっかり議論しておくべきでした。信頼関係が醸成されないと、なかなか決着は難しいです。

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