あなたが思う「お金持ち」と、職場の上司や若手が思う「お金持ち」。このイメージには、大きな乖離(かいり)があることが調査で分かってきた。年代別の「お金持ち」とは誰なのか? 博報堂生活総合研究所による連載「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」の第6回、第7回は、「お金持ち」という言葉をフックにして世代間ギャップを明らかにしていく。

 みなさん、突然ですが「お金持ち」と聞いてどんな人を思い浮かべますか?

 世界の長者番付上位の人、アラブの石油王、ハリウッドセレブ、大地主、お隣さん……。きっと人それぞれだと思います。それもそのはず、実は「お金持ち」についての明確な定義はありません(似た意味合いの「富裕層」については野村総合研究所が定義していますが)。

 けれども人々は「お金持ち」という言葉をよく口にします。「あの人お金持ちだよね」「お金持ちになりたい!」「別にお金持ちに興味ないし」……。

 「お金持ち」というワードを発するとき、生活者はアタマの中でどんな人をイメージしているんだろう……そんな個人的興味からスタートした今回の企画。進めていくうちにとても興味深い発見がありました。

「あなたが思うお金持ちって誰ですか?」 この質問で世代間ギャップが丸分かり!(画像/Shutterstock)
「あなたが思うお金持ちって誰ですか?」 この質問で世代間ギャップが丸分かり!(画像/Shutterstock)

 「これからは風の時代だ! “持たない”自由を楽しむのだ!」という世の流れと完全に逆行しますが、そんなのどこ吹く風。土臭く「お金持ち」についての発見をご紹介していきますので、どうぞご笑覧ください。

「お金」を信じる、「お金」を欲する人が、約30年間で最高に

 まずお金持ちに話を絞る前に、「お金」について博報堂生活総合研究所の長期時系列調査「生活定点」からショッキングなデータたちをご紹介しましょう。

 下記は、「あなたが信じるものは何ですか?」という質問に対して「お金を信じる」「愛を信じる」「運命を信じる」と回答した人の割合を、調査開始の1992年から最新調査の2020年まで28年間の時系列で見た結果です。92年には3つのうち最下位だった「お金」が右肩上がりにスコアを伸ばし、14年を境にトップに躍り出たのです。

あなたが信じるものは何ですか?
あなたが信じるものは何ですか?
出典:博報堂生活総合研究所「生活定点」調査 ※以降、出典表記がないものはすべて「生活定点」のデータ

 具体的にデータを見ると、「お金を信じる」と答えた人は、92年調査では74.3%だったのが20年調査で85.6%。その差は実に+11.3ポイントで、過去最高となりました。一方、「愛を信じる」と答えた人は、92年86.6%から20年78.4%(-8.2ポイント)、「運命を信じる」と答えた人は、92年77.1%から20年64.9%(-12.2ポイント)で、ともに過去最低となっています。

 愛や運命といった抽象的で不確実なものより、確実に価値を測れて生活の基盤となるお金を信じよう、という流れがあるようです。世知辛い世の中ですね……。運命論者の筆者からするとかなり驚きのデータでした。もちろんコロナ禍で経済状況が不安定になり、収入面に不安を抱える人が増えていることは背景にあると思いますが、長期的な意識トレンドであることがデータから読み取れます。

 続いて、「あなたが欲しいものはなんですか?」という質問の回答ランキングトップ5を見てみましょう。00年には1位「健康」、2位「お金」だったのが、10年には「健康」を抜いて「お金」が1位に。20年も「お金」が首位をキープしており、スコアは00年48.4%から+12.5ポイントの60.9%で過去最高となっています。さらに「健康」とのスコア差は年々開いています(00年-0.7ポイント→10年+10.6ポイント→20年+17.6ポイント)。お金があっても健康でなくては人生幸せじゃないのでは? いやいや、地獄の沙汰も金次第、健康もお金で買うのだ!という意識の表れなのでしょうか……。

あなたが欲しいものはなんですか?
あなたが欲しいものはなんですか?

 さらに、「お金について、あなたに当てはまるものを教えてください」という質問で「お金は、命の次に大事なものだと思う」と答えた人は00年26.1%から20年31.1%(+5.0ポイント)で、こちらも過去最高値となりました。

 今、生活者は約30年間で最もお金を信じ欲していることが、これらのデータからお分かりいただけたと思います。生活者にとって大事なお金をたくさん所有するお金持ち。今回は実際の保有資産額の話ではなく、生活者のアタマの中のお金持ちイメージに迫ってみたいと思います。

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