タオルや電気ポットが活躍 車中泊を快適にする一工夫『車中泊入門』

最近は密を避けて楽しむソロキャンプが人気だ。同時に、少人数で、大掛かりなキャンプ道具がなくても始められるとして注目度が上がっているのが「車中泊」である。文字どおり、車中で一晩を過ごすことを指す。

本書『車中泊入門』は、その魅力と、上手に活用するための基本的な装備や心構えを紹介。生活にうまく取り入れれば、趣味の幅や生き方を広げてくれる一方で、狭い車内で夜を過ごすからこそ注意すべき点があることを、具体的に伝えている。著者の武内隆氏は、50代から車中泊の旅を始め、これまでの車中での宿泊日数は延べ2500日以上、走行距離は約25万キロメートルにもおよぶという。

「気ままな旅」が最大の魅力

車中泊の大きな魅力は「気ままで、自由自在」な旅が楽しめるところだ。予約したホテルや乗り物の予定に合わせる必要はなく、急な予定変更にも臨機応変に対応できる。

例えば、こんな経験を著者は挙げている。天気の変わり目に見られる絶妙な富士山を撮るために出かけたところ、雨が本降りとなって山の姿が拝めなかった。そこで、その日の撮影は諦めて、伊豆へ行くことに。温泉にゆっくりつかり、その日は車で一泊。翌日、富士山へ戻ってみると、霧の中から厳かに山体が現れ、さらに虹もかかり……満足のいく写真を撮ることができたそうだ。

小旅行や山登り、釣りなどの趣味を持ちながら、これまで土日の休みしか使えなかった人は、車中泊を利用すれば、より充実した時間を過ごすことができる。金曜の夕方に家を出て車中泊をし、土曜の朝目的地へ向かえば土日はまるごと趣味に没頭できるからだ。スケジュールをしっかり立てておけば睡眠時間も確保でき、疲れも残らない。3~4日の旅行を満喫したようなもので、月曜からの仕事にかえって集中できると著者はいう。このように、ライフスタイルを一変させる力を車中泊は秘めているのだ。

静かにひっそりと過ごす

快適な車内空間をどう作るか、についても手厚く解説されている。例えば、寝心地をよくするためには、座席を倒して昼寝マットを持ち込む、座席の隙間にタオルや衣類で詰め物をして毛布をかけるといった方法が紹介されている。また、サブ電源を搭載して小型冷蔵庫、電気ポットなど家電を持ち込み、無線LANを使って通信環境もキープする……というように、いくらでも便利に、心地よくできる。

注意点としては、宿泊場所だ。オートキャンプ場や「RVパーク」(車中泊専用の施設)を除き、正式に認められている場所はない。そのため道の駅などを慎重に選びつつ、静かにひっそりと過ごすことがマナーとなる。また長時間座ったままだとエコノミークラス症候群になるリスクもある。車から降りたらなるべく体を動かすことが肝要だと著者は述べる。

車中で過ごすための準備や装備、培われた柔軟な対応力は、いざという時にもきっと役立つだろう。不安な時代だからこそ、トライしてみる価値がありそうだ。

今回の評者=若林智紀
情報工場エディター。国際機関勤務の後、人材育成をテーマに起業。その後、ホテル運営企業にて本社人事部門と現場マネージャーを歴任。多岐に亘る業界経験を持つ。千葉県出身。東大卒。

ヤマケイ新書 車中泊入門

著者 : 武内 隆
出版 : 山と渓谷社
価格 : 1,100 円(税込み)

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