新社会人ご用心 ビジネスメールのご法度10カ条
毎日使うビジネスメール。当たり前のように書いているが、用件が相手に伝わらず、ミスやトラブルに発展することがある。会社員千人に「ミスだらけのメール」を見てもらい、間違いが多かった順に並べ、気をつけるべきポイントをまとめた。
メールに写真や文書などを添付する場合、容量が大きすぎると相手にメール自体が届かないことがある。スマートフォン(スマホ)で撮った写真なども容量が大きいので注意。
専門家から 「一般企業が受信できる容量の上限は5メガバイトから10メガバイトであることが多いため、添付ファイルは合計でも2メガバイトまでにした方がいい」(平野さん)。サイズが大きい場合は事前に相手に確認してから送るか、圧縮して小さくしてから送る。ファイル転送サービスを利用する方法もある。
メールには大きく2つの送信方法がある。1つがテキスト形式といって文字だけが送れる。もう1つがHTML形式で画像を付けたり文字の大きさや色などを自由に変えたりできるがこの形式に対応しないソフトもある。無意識にメールを送っている人が多いが、メール画面で確認し、初めて送信する相手にはテキスト形式を選ぶとよい。
専門家から 形式を確認するには、フォントが変えられるかどうかを調べるといい。「MSゴシック」などと書かれた部分が変更できればHTML形式。相手が対応しているかどうか、送る前に確認を。
当然だがメールアドレスを間違えると相手に届かない。場合によっては、似たアドレスの人に届いてしまうこともあるので、取り扱いには注意が必要だ。送る前に必ず確認する。
専門家から アドレスに使う文字や記号の中には、特に間違いやすいものがある。例えば「.」と「,」(ドットとカンマ)、「-」と「_」(ハイフンとアンダーバー)、「l」と「1」(小文字のLと数字の1)、「O」と「0」(アルファベットのOと数字の0)など。
「メールの本文で画像を添付したことを書いたのに、実際に付けるのを忘れてしまった」――。アイ・コミュニケーションの調査では、メールの失敗で1番多かったのが添付ファイルの付け忘れで、調査対象者の7割が過去1年間で経験していた。
専門家から 写真や文書などを添付する場合は、まず本文に添付したことを書く癖を付けよう。添付忘れを指摘してくれるメールソフトなどを使うのも一手だ。ファイルを付けてから本文を書くやり方もあるが、いつもと手順を替えるとミスにつながりやすいので注意。
多くのメールソフトには、「重要度」を指定する機能がある。重要度を「高」にすると、相手に届いたときに「!」マークなどが付く。
専門家から 重要度は本当に重要なものだけに付けた方がいい。さほど重要ではないのに付けていると不快に感じる相手もいる。また頻繁に使っていると、本当に緊急性や重要性が高いメールまで見逃されてしまうこともある。
ビジネスメールでは、基本的に相手の社名をきちんと書く。例えば日経コーポレーションの田中太郎社長に出す場合は、「日経コーポレーション社長」と書き、改行して出だしをそろえて「田中太郎様」と書く。
専門家から 役職、氏名、様の順番で書くのが基本。「社長様」は二重敬語になるので避ける。「殿」は目下の人や事務的な文書に使うので、ビジネスでは使わない方がいい。
手紙の場合は時候の挨拶から始めるのが基本的なマナーといわれるが、ビジネスメールの場合は簡潔に用件を伝えるのがベスト。
専門家から 長文は内容が伝わりにくくなり、かえって失礼になる。簡潔なあいさつで十分。
「CC」は参考までに送りたい相手がいる場合に使う。メール本文には送信した相手の名前も書く。「日経コーポレーション社長 田中太郎様 (CC 営業本部 佐藤次郎様)」、「営業本部 佐藤次郎様にもCCでお送りしています」など。
パソコンの基本ソフト(OS)によっては、メールの文字が正しく表示されないことがある。
専門家から OSに搭載される文字コードの違いによる。(1)などの丸付き数字、ドルやグラムなどの単位記号は読めなくなることが多い。
大切なのは、用件を簡潔に伝えること。
専門家から 1行は長くても30文字程度で改行するとよい。用件を箇条書きにした方が読んだときにポイントがつかみやすいためだ。例文の場合だと、「■」や「◎」などを使って整理する。
表の見方 数字は間違えた人の数。注意すべきポイントと専門家のアドバイス。専門家はビジネスメール教育を手掛けるアイ・コミュニケーションの平野友朗社長。
■「送った=伝わる」じゃない
ミスで特に多かったのがファイルの添付忘れ。ビジネスメール教育を手掛けるアイ・コミュニケーション(東京都千代田区)の平野友朗社長は「添付忘れを完全に防ぐ方法はない。添付したことを本文中に書く癖をつけ、相手に気づいてもらおう」と話す。
用件が伝わりづらくなる長すぎる文章は避けたい。最近はスマートフォンでメールを確認する人も多く、一読してすっと頭に入る簡潔さが求められる。1つの文章を短くし、箇条書きや改行して行間を作りメリハリをつける。
そして「メールを『送った』=『伝わった』ではないと肝に銘じる」(平野さん)こと。受信者側に立ち、理解できる内容かどうか、送信前にきちんと確認しよう。
メールが普及し、書き方は身に付いていると思い込んでいる人は多い。だが日本電信電話ユーザ協会(東京都千代田区)の吉川理恵子さんは「若い人ほどきちんとしたメールの書き方を知らない」と指摘する。携帯メールや「LINE(ライン)」など短文のやり取りが多いためだ。
最近は返信が遅いことにいらだつ人も増え、アイ社の調査では「24時間以内の返信を希望する人が8割以上」。すぐに詳細な返信ができない場合は「後ほどお返事します」などとひとまず返信する方がいい。メールマナーも言葉と同様、変わりつつある。
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調査の方法 間違いを含んだメールを用意し、3月中旬にインターネット調査会社マクロミルを通じそれぞれの記載について正誤を選んでもらった。回答者は20~60代の会社員の男女で各年代同数、有効回答数は1030。
フレーズについては日本電信電話ユーザ協会の「電話応対技能検定3.4級公式問題集」を参考に間違いが多いものを抽出、同協会の吉川理恵子・技能検定部長と一橋大学国際教育センターの石黒圭教授に監修を依頼した。
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