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コロナ禍は介護の現場に新たな負担を強いている(写真はイメージ)

コロナ禍は介護の現場に新たな負担を強いている(写真はイメージ)

コロナ禍で介護の現場が大きな影響を受けていると聞いたわ。実際にどんな問題が生じているのかしら。国も対応を急いでいるようだけど、成果は上がっているのかな――。介護の現場にコロナ禍が及ぼす影響と対策について、藤井智子さんと海老沢亜希子さんに山口聡編集委員が解説した。

 藤井さん「実際にどんな問題が生じていますか」

よく知られているように、高齢者は若い世代よりも新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいです。しかし多数の高齢者やサービスを提供する職員たちが接触する介護の現場はどうしても感染リスクが高くなります。それを避けようとして、高齢者が介護施設に通うのを控えたり、介護事業者がサービス提供を制限したりする例が一部に出ています。

利用者が減ると事業者の経営が悪化します。厚生労働省の調査によると、コロナ流行前と比べて収支が「悪くなった」と答えた事業所は、緊急事態宣言が出ていた2020年5月時点で全体の47.5%でした。10月になっても32.7%がそう答えています。感染者が出ると、その人と接触した介護職員が出勤停止になり、その他の職員がしわ寄せを受けて過重労働になる事態も起きています。いつも通りの介護を受けられず、状態が悪化した高齢者もいます。

 海老沢さん「国はどんな対策を打ち出していますか」

職種や勤務時間などを問わず、感染者が出た施設で利用者と接する職員に20万円の慰労金を配ったり、消毒や換気のための経費を補助したりしています。介護施設などが実際に提供したサービスよりも長い時間サービスを提供したとして、料金を上乗せできる特例措置も打ち出しました。

 藤井さん「介護報酬が改定されると聞きました」

事業者に支払われる介護サービス代金のことですね。40歳以上の国民は介護保険料を払い、介護保険制度に加入しています。年をとり介護サービスを使うようになると、介護保険から介護サービス事業者にその費用の大半が支払われる仕組みです。このおかげで利用者の負担は抑えられるわけです。今は年11兆円ほどの費用が介護保険から支払われており、これを保険料と税金で半分ずつ賄っています。

介護保険から事業者に支払われる費用は、サービスの一つ一つについて細かく決まっています。これが介護報酬です。介護報酬は物価動向や事業者の経営状況を勘案して3年に1度見直され、4月がその見直し時期に当たります。20年から厚労省の審議会で議論が続いています。20年末には国の予算編成に合わせて、介護報酬全体を0.7%引き上げることが決まりました。

介護報酬は引き上げると事業者の経営にプラスですが、保険料や利用者負担の増加につながるので慎重な意見もありました。最終的にはコロナ禍での影響も踏まえてわずかに引き上げることになりました。具体的な一つ一つの介護報酬については近く決まります。感染症の流行や自然災害が起きたときに備えて訓練したり、事業を継続できる計画をつくったりすることを条件に、報酬を上げるなどの方針が既に固まっています。

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