ひらめきブックレビュー

GAFAで通用するロジカル思考 核心は「要素分解」技術 『40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法』

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

「ロジカルに考えること」はビジネスパーソンに求められる基本の力だと言っていいだろう。だが、そのロジカル思考の核心について、それこそロジカルに、人に分かるように説明できる人は少数なのではないか。

本書『40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法』は、ロジカル思考のキモをわかりやすく伝える稀有(けう)な一冊。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)のうちの1社(どの会社かは明かされていない)に転職し、シニアマネージャーとして働く寺澤伸洋氏が、「思考力」「伝達力」「会議力」「仕事術」「実践力」の項目で、ロジカルな考え方と仕事での実践について解説している。

実は本書の内容は、著者がイチから考え出したものではない。大学卒業後から17年間勤めていた日系の複合機メーカーで、当時の上司である経営企画室の本部長Nさんから教わってきたことだ。このNさんのもとで磨かれたスキルが、GAFA部長として働く今の自分を支えていると著者は感謝を込めて語っている。本書はそんな若かりし頃の著者、20代半ばの「寺澤君」とNさんとの軽快な会話形式になっている。

■視点を高くして全体を見る

ロジカルに考えるとはどういうことなのか。Nさんの答えは「要素分解すること」と端的だ。例えば「美味(おい)しいカレーを作るにはどうすればいいか」という問いがあったとする。寺澤君はジャガイモやニンジン、カレールーといった材料を真っ先に思い浮かべるが、Nさんは「全然ダメ」と一刀両断。代わりに「ターゲット」「準備」「雰囲気」といった切り口を挙げる。カレーを食べる人が男性なのか女性なのか、何人なのか、お皿は何枚必要か、提供する場所はどこなのか……といった複数の視点を示すのだ。このように、高い視点から「全体像」を見ることが要素分解のコツだとNさんは説く。

とはいえ、この要素分解がなかなか難しい。そんな寺澤君に対して、Nさんは以下の4つの考えるフレームを挙げる。

1.水平思考
2.垂直思考
3.思考の高さを変える
4.時系列を変える

1は思考を横に広げていくこと。例えば「速く走るための方法」を考えるときに、「速く泳ぐためにどうするか?」と別のカテゴリーへ目を向けて類似性を探る思考法だ。2は考えを深掘りすること。MECE(ミーシー、漏れなくダブりなく物事を整理する考え方)、や5W1Hといったフレームワークを使うことで、視点が増え思考が深まる。

「本部長ならどう考えるだろう?」などと想像して視座を変えるのが3。過去・現在・未来の視点で考えるのが4だ。これを行きつ戻りつ繰り返すのがNさん流。各フレームは知っている人も多いだろうが、それを複数掛け合わせて使うことで格段に思考の範囲が広がることを教えてくれる。

思考の道筋やフレームをクリアに説明することは、自分のパフォーマンスを上げるのみならず、部下の疑問を晴らしながら的確に導くことでもある。巻末にはNさんから寺澤君へのメッセージも掲載されており、2人の時を越えた信頼関係も本書の見どころだ。「固い」イメージの強いロジカル思考を扱いながら、心温まる一冊なのである。

今回の評者 = 倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。