「すぐに友達になれる」
2月上旬の深夜。JR秋葉原駅から徒歩5分にあるクラブ「秋葉原MOGRA(モグラ)」(東京・台東)でアニメソング限定イベント「アニソンマトリクス」が開催された。店内に入ると、大音量のダンス音楽が鳴り響き、100人を超える客が体を揺らす。3カ所に設けたスクリーンにはVJ(ビデオジョッキー)が曲に合ったアニメ画像に素早く切り替え、会場を沸かせていた。
「たどりつく場所さえもわからない~」
曲が変わると店内の一体感がさらに強まる。人気アニメ「機動戦士ガンダムSEED」のテーマ曲だ。曲に合わせて緑やピンク色の発光スティックを振る客や、盛り上がって声をあげる客がいて熱気に圧倒される。
MOGRAは2009年8月に開業した人気クラブ。アニメやアイドルソング、ゲーム音楽などをかけるイベントを週4~6回開催する。DJはミニマルテクノやダブステップといったダンス音楽にリミックスした曲を使用。一般的なクラブと同様に客の反応に合わせて曲を変えたり、踊りやすいように速さやリズム音を調整したりして店を盛り上げる。
客層は20~30代が中心。これまでに数十回来ているという男性(24)は「他のクラブと違って、みんなフレンドリーで嫌な思いをしない」と話す。1人で来ていた女性会社員(29)も「アニソンという共通の趣味があるため、すぐに友達になれる」と笑う。
「アキバ系クラブ」という形で人気が出てきたのはここ1~2年。MOGRA店長兼DJの山田将行さんは「昔はアニソンなんてクラブでかけられない雰囲気があった」と振り返る。
ネット上で楽曲を配信する「ネットレーベル」が普及したことで、アニソンやJ―POPを自分でリミックスして発表する人が増え、認知されるようになった。
MOGRAの来客数は月に1000人強で、開業時と比べて2倍以上に増えた。昨年11月に東京・江東の有名クラブ「ageHa」(アゲハ)を貸し切ったイベントには約2000人が集まった。和やかな雰囲気で、「ナンパ目的や、酔っぱらって暴れる人がいない」(29歳女性)のも魅力のひとつという。