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地球温暖化対策推進本部の会合であいさつする菅首相

地球温暖化対策推進本部の会合であいさつする菅首相

菅義偉首相は10月、2050年に日本の温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げたわ。中国と韓国も前後して脱炭素目標を表明したようね。米欧などと合わせ、世界で温暖化防止が実現するのかな。

日常生活にも関係してくる温暖化の問題について、石原英理子さんと河野美香さんが滝順一編集委員に聞いた。

――なぜ各国の脱炭素表明が相次いだのですか。

気候変動が一因とみられる異常気象の頻発などへの危機感が共有されてきたことが背景にあります。二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスによる気候変動を防ぐにはCO2排出を世界で大幅に減らしていかねばなりません。

また、再生可能エネルギーや電気自動車など脱炭素テクノロジーが新たな雇用や富を生む源泉との認識が、各国首脳にはあると思います。新技術をいち早く手にして普及させ、自国の産業競争力を優位にしようと考えています。

中国は香港や新型コロナウイルスの問題で世界から反発を受けています。気候変動対策を重視する欧州連合(EU)と協調を図る意図もあり、脱炭素を宣言したともいわれます。日本政府は米大統領選の先行きを読んだのかもしれません。米大統領選で当選を確実にしたバイデン前副大統領は「2050年脱炭素」を公約しています。

――どうやって目標を実現するのですか。

化石燃料の利用をやめなければいけません。石炭や天然ガスを燃やす火力発電所は限りなく減らす必要があります。代わりの電源は再生エネか原子力発電です。日本企業では、リコーやイオンなどが企業活動で使う電気を100%再生エネでまかなうようにすると宣言しています。自動車も基本的にガソリン使用をやめ電気自動車か、水素で動く燃料電池車で代替します。

石炭を使うことが多い製鉄やセメント、化学工業は徹底したエネルギー効率の改善や燃料の転換を求められます。家庭やオフィスも省エネを進めるとともに、ガスや灯油の使用を控える方向でしょう。

また温暖化ガスの一種であるメタンは牛など反すう動物の腸内発酵でも生じます。牛肉などの消費を減らし植物性たんぱくなどで代替することになると思います。

――どんな課題がありますか。

化石燃料の利用の上に成り立ってきた文明を否定することになります。産業や生活は大変革を余儀なくされます。化石燃料にかかわる産業では雇用が心配です。化石燃料の代替に水素を燃料にするには、水素を製造し運ぶ社会基盤が必要です。世界の政治・経済のパワーバランスも一変する可能性があります。私たちは、生活や働き方を変えていく覚悟が求められます。

CO2排出を実質ゼロにするには、CO2を吸収する森を増やすため植林をしたり工場から出るCO2を回収して地下に埋めたりすることも必要でしょう。回収・埋設にはコストがかかりますし、国土が狭い日本には、埋められる場所があまりありません。

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