ひらめきブックレビュー

断る勇気と集中で時間を増やせ 多忙な弁護士の仕事術 『超多忙な弁護士が教える時間を増やす思考法』

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本業をバリバリこなしつつ、副業や趣味、余暇を充実させている人がいる。本書『超多忙な弁護士が教える時間を増やす思考法』の著者、谷原誠氏もその一人だ。25人の弁護士を抱える法律事務所の代表パートナーを務めながら、法律専門書やビジネス書を年間4~5冊執筆。セミナー講師なども引き受けているのに、毎日7時間の睡眠時間を確保していると聞けば、その時間管理術に興味をそそられるだろう。

谷原氏が編み出した、時間を有効活用するノウハウと考え方をまとめたのが本書だ。ビジネスパーソンの日常シーンや、村上春樹やウォーレン・バフェットなど著名人にまつわる21のエピソードと「格言」とを引きながら、時間管理の勘所を説く。時間に追われないようにする秘訣は「やることを絞り込む」「集中する」の2点にあるようだ。

■人生の優先順位を決める

時間管理の出発点となるのが「人生の優先順位」をつけることだ。自分の人生において何が大切なのか、自らの価値観を紙に書き出すなどして棚卸しをしていく。こうして優先順位を決めることで、自分のやりたいことや大切なことに時間を最大限投下できる。例えば、「家族との時間」を「仕事での成功」よりも優先すると決めたら、懇意の取引先から誘われても、息子との山登りの約束があればそちらを取る、ということだ。

優先順位もなく、他人からの誘いに感情的に反応してしまうと「やりたくないこと」が増えてしまう。つまり「断る勇気」を持つことも時間管理の心構えとして大切だ。本書にあるバフェットの言葉を引くと「きちんと"ノー"が言えなければ自分の時間はコントロールできない」のである。

時間を費やすべきものが整理できたら、いかに集中して行うか。方法の1つに「あと回し」を避けるというものがある。例えば出社して郵便物やメール、雑誌記事などの確認をする場合、内容だけを見て「あとで返信しよう」「あとで読もう」と先送りすることがあるだろう。そして、あとで読み返して対応したら、再読のための時間と気力を消耗してしまうはめになる。そこで、メールは開いた段階で返信する、気になった記事はその場で読んで感想を書きつけておくなど、手を付けたら最後まで終わらせる意識が肝要なのだ。多くの成功者は「一度しか触らない」、つまり物事に着手した段階で完結させるというルールを実践している。

「しかし、『どんな場合でもすぐやる』という原則を貫くことはおすすめしません」と著者は付け加える。例えばメールの返信では、時間をかけて理解を深めてから対応することが必要な場合もある。その場合は他の仕事の合間に返信内容を考えたり、書いたものを寝かせるとよい。要するに内容や状況によるわけで、臨機応変に対応することが大切だ。

最後に、本書からピーター・ドラッカーの言葉を引用しておきたい。「成果をあげるための秘訣を1つだけ挙げるならば、それは集中である。成果をあげる人はもっとも重要なことからはじめ、しかも一度に1つのことしかしない」

今回の評者 = 福井晋
情報工場エディター。ITビジネス専門誌記者、ビジネス総合誌編集長などを経て2001年からビジネス系専門のフリーライターとして活動している。

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