presented by 日本能率協会

本業にも知見の「リターン」あり[PR]都市部大企業人材、地方で活躍

「本業で触れる財務諸表の見え方も変わった」と話す中谷玄氏

第3回 スキル生かせる分野に注力

大都市の大企業に勤める人が地方中小企業を副業・兼業スタイルでサポートするメリットは、手助けを受ける地方中小企業にばかりあるわけではない。経営に参画する副業・兼業者の側にも、様々な「リターン」が見込める。鹿児島県鹿屋市の農業生産法人株式会社オキスを財務面でサポートしている、新生銀行の中谷玄・名古屋支店支店長代理は「想像していた以上に参画の手応えは大きかった」という。

同支店で中谷氏は法人営業を主に担当している。融資や資金管理を含め、企業財務に幅広く向き合う仕事だけに、経営者と話し合う機会は多かった。しかし、実際にオキスで企業経営の現実に触れて、「財務諸表で見る企業財務とのリアルさの違いを肌で感じた」という。

これまでも取引先の財務諸表を見ることは当たり前の業務だったが、オキスではその数字それぞれに働き手や商品のストーリーが絡み合っていて、経営トップの言葉が複雑な諸事情を肉付けする。「本業で触れる財務諸表も、以後は見え具合が変わってきた」(中谷氏)。取引先として向き合うのではなく、中立的な外部アドバイザーのような立場から関わるのも、本業との違い。「資金の貸し借りといった、直接的な利害関係がないだけに、自分なりの提案を示しやすい」という。

「自己実現や社会貢献といった意味でも、自分にとってプラスだと感じる」と中谷氏。本業のほうでも、「金融」という経済インフラの要を担うが、オキスへの助言や提案では「個人として役割を果たしているという実感を得やすい」。自らが本業で養ってきた知見を、目の前の経営課題に解決策として役立てられるのは、プロとしての充実感を得られる体験だという。

ワークデザインラボではメンバーの参画に、厳格な時間や労力の定めを設けていない。たとえば、中谷氏の場合は、2週間に1度のペースで、経営者と2時間程度のミーティングを持つのが、唯一の決まった業務だ。必要に応じて、追加のミーティングを開くこともあり得るが、基本は2週間に1度。しかも、実は中谷氏は鹿児島県の現地を訪れたことがない。「最初に社長にあいさつした『初めまして』の瞬間からずっとオンライン会議上でのおつきあい。完全なリモートワークで経営に参画している」という。

チームに加わるメンバーにとっての心理的、物理的な負担をできるだけ軽くするのは、ワークデザインラボの基本的なスタンスだという。いわゆるコンサルタント契約のような、一定の労務提供やアウトプットを義務づけられた関係よりも、「対話の積み重ねから生まれる、本質的な信頼関係のほうが大事」という。アドバイスする際に心がけているのは、「実際の解決につながりそうな課題に絞る」ということだ。自分が持ち合わせているスキルやノウハウが生かせそうなテーマに注力するのも、成果につなげるポイントだという。

距離の離れたリモート環境で、しかも担当業務を限った関わりだが、「先方の社長からは成果を認めてもらえている」と、手応えを感じる。サポート先との関係を保つうえでは、「互いに期待しすぎない」という間柄が望ましいという。大都市の大企業で得た知見を、持ち寄れる範囲で提供するといった、のめり込みすぎないコミットは、多くのビジネスパーソンにも試しやすそうだ。「サポートを求めている地方中小企業は潜在的には少なくないはず。こうした『お試し』的なバックアップは本人が自分のキャリアを見つめ直すうえでもプラスに働く」と語る中谷氏は、地域と規模をまたいだ「複業」の可能性を自ら証明しているようだった。

第2回 「知見生かせる」と副業に名乗り

鹿児島県大隅地方でとれる野菜や果物の乾燥出荷ビジネスを手掛けるオキスを、財務面でサポートしている

新生銀行の名古屋支店で支店長代理を務めている中谷玄氏は、銀行業務のかたわら、ワークデザインラボのパートナーとして地方中小企業を副業・兼業の形でサポートしている。中谷氏が主に財務面でサポートしている、乾燥野菜の製造・販売を手掛ける農業生産法人株式会社オキス(鹿児島県鹿屋市)の本社は、桜島とつながった大隅半島のほぼ中央に位置する。

もともとは木材輸送から出発した物流会社だった。配送先の大隅地方でとれる野菜や果物を乾燥させて出荷するビジネスを発案。2006年に農業部門を独立させる格好で、オキスを設立した。世界的な乾燥野菜・果実のブームに乗って、事業は拡大。2015年にはシンガポールに拠点を設け、19年には新社屋も建てた。

しかし、業容が拡大する半面、経営面では課題と直面していた。創業者の岡本孝志社長が判断する案件が増えて、繁忙を極めたのも、オキスが抱えた経営課題の一つ。経営規模が拡大したことに伴い、財務的な経営判断も一段と高いレベルが求められるようになってきた。「創業以来、社長がほぼ自分だけで資金や投資を判断してきたが、手に余る状態になったようだ」(中谷氏)

たまたまワークデザインラボの石川貴志代表が鹿児島県で講演する機会があり、聞き手として参加していた岡本社長はその場で協力依頼を持ちかけた。石川氏が事情を聞き取って、メンバーに案件として提案した際、中谷氏はこのプロジェクトのリーダーとして名乗りを上げた。「自分の持つ金融人としての知見が生かせると感じた」からだ。総務・人事やマーケティングなどに通じたメンバーを加えた5人ほどでチームを組んで、オキスのサポートに取り組んでいる。

「経営を助ける」と一口にいっても、実際の業務は幅広い。チームが参画している期間だけ、業務が楽になったり、業績が上がったりしてもあまり意味はない。長期的に自立して安定的に経営できる「サステイナブル(持続可能)」な経営環境を生み出す必要がある。そのために中谷氏が重視したのは、経営の「見える化」だ。「それまでは社長一人の頭の中に経営計画も資金繰りも集約されていて、社内で十分に情報が共有されていなかった」という。

財務に強みを持つ中谷氏は「数字の言語化」に取り組んだ。社長が属人的に把握していた売り上げをはじめとする、利益や経費などの数値データを、社員が肌感覚で理解しやすいよう、洗い出して整理していった。具体的な商品ラインアップと付き合わせることによって、「利益を出している商品と、そうでもない商品の色分けが可能になった」(中谷氏)。数字を社内で共有すれば、複数の目で業績や商品を分析しやすくなる。

社長を数値管理から解放するメリットはほかにもある。社長にしかできない、本来の「社長業」にエネルギーを注いでもらいやすくなることだ。「長期の経営計画づくりや、社外との交渉、公的なプロジェクト参加など、経営トップならではの仕事がいくつもある。財務を社内で分業化できれば、社長は本来のミッションに打ち込める」と、中谷氏は財務のプロが参画する意義を説明する。

大企業では財務部門が独立していて、近ごろは最高財務責任者(CFO)を置くケースも増えてきた。しかし、財務部門を設けるまでの規模ではない地方中小企業の場合、財務部長ポストが設けられていないところもある。社長が財務と販売のトップを兼ねている場合は相互チェックが働きにくくなるうえ、専門的な資金管理が難しくなりがちだ。「大企業から財務経験者を迎えることによって、マネー関連の経営水準をレベルアップしやすくなる。アドバイザー的な立ち位置からの参画であれば、コストや待遇などの面でも経営者は割と活用しやすいはず」と、中谷氏は深くコミットしすぎない立ち位置のメリットを説く。

第1回 企業動かす、得がたい体験

大手銀行に務める中谷玄氏は、乾燥野菜メーカーの仕事も兼務している

大都市の大企業に籍を置く現役ビジネスパーソンが地方の中小企業を副業・兼業スタイルでサポートする――。「複業」とも呼ばれる、こうしたしなやかな働き方が日本でも広がり始めた。大都市・大企業に勤める人たちの背中を押すのは、働き手と地方中小企業を引き合わせる事業を手がける支援企業の存在だ。個人ではなかなか見付けにくい、地方中小企業での人材ニーズを拾い出し、潜在的な副業・兼業希望者とマッチング。地域を越えた「職場」を生み出している。

自ら「複業家」と名乗る石川貴志代表が立ち上げた一般社団法人の「Work Design Lab(ワークデザインラボ)」は、大都市と地方をつなぐプロジェクトを進めている代表的な組織だ。「働き方をリデザインする」をテーマに掲げ、働き手と企業・団体を応援している。2017年には経済産業省中小企業庁がとりまとめた「兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集」にも掲載された。

約80人のメンバーがそれぞれの知見を持ち寄って、チームを組み、地方中小企業を支援している。メンバーの過半数は会社勤めで、自らも経営者の人が少なくない。各自が強みとするスキルやノウハウは様々で、経営全般のほか、財務、企画、人事・総務、マーケティングなど、多岐にわたる。

新生銀行の名古屋支店で支店長代理を務めている中谷玄氏もワークデザインラボのパートナーだ。2018年から副業として参加している。もともとは勤め先の労働組合で執行委員会の副委員長に就いたのがきっかけ。ちょうど「働き方改革」の議論が熱を帯びていた時期だったこともあって、新しい働き方を調べるうちに、ワークデザインラボを知った。

ワークデザインラボでは様々なスキルやノウハウを持つメンバーが知見を補い合う形で、地方中小企業のビジネスを手助けする。その仕組みを知って、中谷氏は「財務方面で培った能力を、どこかで役立てることができるかもしれない」と感じたという。経営課題を抱える地方中小企業では財務以外にも、販路拡大や労働管理など、複数の難題に直面しているケースが珍しくないが、ワークデザインラボはメンバーのチーム化という手法を使って、多面的なサポートを可能にしている。

中谷氏が経営をサポートしている企業は、鹿児島県鹿屋市の農業生産法人株式会社オキス。農業の6次化に取り組み、乾燥野菜の製造・販売を手掛ける食品加工メーカーだ。銀行員としての経験を生かして、中谷氏は主に財務面をバックアップ。経営者に資金管理面での助言を提供するほか、長期経営計画づくりも手伝っている。

多くの場合、ワークデザインラボのメンバーはもともとの勤め先や仕事に就いたまま、副業・兼業のスタンスで、地方中小企業の経営に参画する。中谷氏も同じ立場だ。ワークデザインラボのおもしろいところは、メンバー入りにあたって、特段の契約関係を結ばないところだ。試験も資格審査もない。「複業家の集まりだけに、互いがゆるくつながっている。過剰に組織化しないほうがみな自発的に動きやすい」と、中谷氏はみる。

すべてのプロジェクトに共通するような、時間や労力単位で換算する、はっきりした報酬規定は用意されていない。中谷氏もいわゆる固定給を受け取ってはいない。「本業を持つメンバーがほとんどなので、サポート先から金銭的メリットをそれほど強く期待しなくても、知見の拡張や社会的な貢献、人脈の拡大といった非金銭的なメリットでモチベーションを支えやすい」(中谷氏)という。

オキスへのサポートを通して、多彩な資質を備えたチームメンバーと組めて、「学びが多かった」と、メリットを感じる。様々なプロフェッショナルが知見を提供して、企業を支える現場に立ち会ったことは、企業の動かし方を考えるうえで得がたい体験となったようだ。

仕事との向き合い方を考えるうえでも、副業・兼業は意味が大きいとみる。「オキスに提供しているのは、本業では割と当たり前といえるレベルのノウハウ。でも、地方中小企業ではそうした知見も十分に行き渡っていないケースがある。大企業に勤めるビジネスパーソンが社内では当たり前と思われている知見を棚卸しすれば、喜んでもらえる活用先が見付かる可能性は高い」とアドバイスする。

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