世界にアニソン文化を発信 定額制の聴き放題始動
バンダイナムコアーツ 副社長 井上俊次氏(23)
7月、中国で開催したライブ「アニソンワールド祭」でもJAMプロジェクトが登場(中国・上海)
市場規模が膨らんだ「アニメソング(アニソン)」ビジネスの立役者の一人がバンダイナムコアーツの井上俊次副社長です。1970年代にロックバンド「レイジー」で一世を風靡しました。井上氏の「仕事人秘録」の第23回では、定額制の聴き放題サービスを立ち上げた当時を回想します。
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アニソンにタイアップ曲が増え、水木一郎さんや影山ヒロノブさんには「次代に『真のアニソン』を伝えたい」という思いがありました。「ポケモンって海外で大人気なんですよ」。うれしそうに話していたのは「ポケットモンスター」の主題歌を歌う松本梨香さん。海外に一番乗りして、扉を開けてくるユニットがあってもいいと思いました。
ユニット名は「ジャパン・アニメーションソング・メーカーズ」の略。合言葉は「150キロの球を投げる選手で集まろう」です。初期メンバーは水木さん、影山さん、松本さん、遠藤正明さん、さかもとえいぞうさん。今と違って注目度は低く、発足会見に集まった記者は10人くらいでした。
ちょうどロボット系のアニメやゲームが多い時期。影山さん指名の仕事がいくつかありましたが、発足当初は、申し訳ありませんでしたが、すべてJAMに回しました。当時手がけた仕事のひとつ、「スーパーロボット大戦」シリーズの主題歌は、20年続いています。
ぼくも含め、みんなアニソンがキャリアのスタートではありません。それぞれの経緯があって、アニソンに救われて今の生活があります。JAMの活動はそうしたアニソンへの恩返しの気持ちが入っているから熱量がすごい。メンバーは平均50歳超えですが、面倒くさいくらいパワフル。ギャラは等分なので、何分の1になっちゃうんですけどね。
「アニメって温かい人たちの集まりだよな」。影山さんとよく話します。2人とも第二の音楽人生をアニソンに救われました。ぼくらが飛び込んだ芸能界は20歳の若者が引退して故郷に帰る世界。一方、テレビアニメは1クールが3カ月。失敗しても次々にチャンスが巡ってきます。それに失敗経験を積み重ねないとヒットは作れません。