コロナ下の就活ルール「大学・企業の対話で導き出せ」人材研究所・曽和利光氏に聞く

キャリアセンターの座談会で、大学や学生が就職活動に向き合う現在の姿が見えてきた。曽和利光氏にあらためて、これらを踏まえ、企業はどのように大学と協業し、採用活動を進めていくべきかを聞いた。(Text:入倉由理子)

オンライン化、時空を超えた出会いの場増える

新型コロナウイルスの感染拡大が懸念され、多くの企業が会社説明会や面接などをオンライン上に移行した。「当初は経験がない企業がほとんどで混乱もありましたが、結果、オンライン面接などツールも活用してうまく乗り越えたと思います」というのが2021年卒予定者の採用・就職活動への曽和氏の総括だ。

曽和利光氏(人材研究所代表取締役社長) リクルートで人事コンサルタントや採用グループのゼネラルマネジャーなどを経験。そ の後、ライフネット生命やオープンハウスで人事部門責任者を務める。2011 年、人事・採用コンサルティングや教育研修などを手がける人材研究所を設立した。

座談会では、肌感覚で企業の雰囲気を知る場や、キャリアセンターなどでの偶発的な情報との出合いなど、リアルな活動に内在していた機会がオンラインでは得にくくなることを危惧する声が上がった。「一方で、オンライン化によって、両者ともリーチする数が増えたというメリットを挙げているのです」(曽和氏)

その背景にあるのは、オンラインという「時空を超える」特性だ。特に地方の大学生の就職活動の壁となってきたのは、会社説明会や面接の多くが都市圏で行われることだ。「時間とお金というコストを気にせず、地域を問わず会社を受けられます。また、Webの説明会の動画を見る時刻は、夜23時がピークといわれています。就職活動が学業を阻害することへの懸念を表明する大学があります。オンラインが持つ時間の非同期性が、それを解消していく可能性もあるでしょう」(曽和氏)

企業側の視点に立っても、採用のオンライン化は日本中、そして世界中から優秀な学生を獲得するチャンスだ。「すべてリアルに行おうとする企業は、今後、採用において後れをとっていくという認識をしたほうがいいでしょう。確かに直接会って確かめ合うべきこともありますから、どのようにしてリアルとオンラインを組み合わせていくかを真剣に検討すべきです」(曽和氏)

面接だけに頼らない採用プロセスが必要

「オンラインでのプロセスが増えることが、真に欲しい人材を獲得するきっかけになり得ます」と、曽和氏は強調する。「従来のリアルな場でのコミュニケーションでは、外向性が高い学生がより評価される傾向がありました。そういう人材を求める企業はいいのですが、内省的で思索的な人を欲する企業でも、面接で会うと感じの良さ、アピールの強さなどが目に留まり、外向性の高い人材を採用してしまうことが実際に起こっています。オンライン化によって、面接の手法や採用プロセスを変えることで、そうしたブレをなくすことにつながるでしょう」(曽和氏)

1つは、言語情報の獲得への注力だという。「オンラインでの面接は、アイコンタクトや身振り手振り、阿吽の呼吸といった非言語情報がまず減ります。そのため、ボディランゲージの多い外向性の高い学生が有利になるということはなくなります。そして、そうした状況のなかでは言語化された情報が重要だと認識し、やりとりの当意即妙が問われるキャッチボール型の面接から脱却することが求められます。具体的には、同じ学生時代に力を入れたことを聞くにしても事前に質問を投げておき、当日にプレゼンをしてもらう、といった方法に変わっていくでしょう」(曽和氏)。その際に重要なことは、「想定外の困難に見舞われたときにどうしたのか」「どのように人の力を借りたのか」「数字で示せる具体的な成果はあるか」など具体的に聞きたいことをあらかじめ明示しておくことだという。

もう1つは、「面接という手法だけに頼らないこと」だと、曽和氏は言う。「面接で得られる情報が限られているのだから、履修の履歴や小論文の提出など、その学生の学業での成果をしっかりと見るプロセスづくりが必要です」(曽和氏)。近年、シラバスの厳格化で学生の勉強時間が伸び、専門知識をしっかりと身につける学生は増えているし、授業スタイルもアクティブラーニングを取り入れるなど、学生がビジネスの現場で役立つスキルを体得している可能性も十分にある。「真に欲しい学生を見極めるために、学業の成果を問う時代がいよいよやってくるかもしれません」(曽和氏)

インターン、再構築すべき領域

就職のルールの廃止議論に対しては以前から、就職活動の早期化を促し、学生の学業の時間を奪うことの懸念を大学側は表明している。「しかし、そもそも有名無実化しており、公明正大なルールづくりをするためには、いいきっかけなのです」(曽和氏)

重要なのは、大学と企業がともに社会に必要な人を育てるという視点だ。オンライン化も相まって、すでに22年卒予定の学生はWeb 上の会社説明会を多く閲覧するなど、就職活動に積極的だ。卒業生が積極的に学生に、仕事やキャリアについて話しに来てくれる大学もある。「たとえオンラインであっても、コロナ禍によって減っているリアルな企業の現場の声を聞く貴重な機会には間違いありません。早い段階からのキャリアビジョン形成のために、企業も社員に積極的な情報発信を求める必要があるでしょう」(曽和氏)

また、インターンシップも今後、再構築すべき領域だろう。「ワンデーというような超短期のものではなく、社会や企業、仕事を深く知る機会を提供するという真の目的にかなうインターンシップを行うべく、企業と大学が協業すべきです。参加した学生を採用してはならない、というルールのもとでは、企業としては単にコストになるだけです。お互いにメリットのある新しいルールを構築しなければなりません」(曽和氏)

通年採用やジョブ型への本格的な移行も、企業と大学がともに考えるべきことだ。企業ですぐに役立つスキルを学んでいる学生もいれば、社会課題の解決にいずれ貢献できるような深い教養を身につける学生もいる。多様な可能性を持つ学生が活躍する可能性を最大化するようなルールづくりを、大学と企業の対話によって導き出すべきときだろう。

【PR】提供:リクルートマーケティングパートナーズ

スタディサプリ 大学の約束2020‐2021

全国の大学30校の独自の取り組みと、育成方針についてレポート。学界、産業界の有識者・著名人インタビューも掲載し、さまざまな角度から「将来活躍する人材の育成と活用」について情報をお届けします。
出版 : リクルート
価格 : 480円(税込)

学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録
注目記事
学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録
Mirai アーカイブズ