人気文具に学ぶ「ヒットのつくり方」

仕事用の道具を収納して持ち運べるバッグに、在宅勤務やテレワークの普及とともに注目が集まっている。フリーアドレスの普及を意識して開発された製品だが、自宅のワークスペースで使うために購入している例が多いようだ。

テレワークの導入状況
テレワークの導入状況
オフィスの外で働く人は年々増加している(出所:総務省「令和元年通信利用動向調査」)

 リヒトラブ(大阪市)は2019年2月に社内の移動用バッグとして「ツールバッグ」を発売。耐荷重50キログラムの頑丈な仕上がりで、カバンやリュックサックに用いられる耐久素材として知られる米インビスタの「コーデュラ」を使用している。A4判の書類を収納でき、フリーアドレスに伴いオフィスで増加している個人用ロッカーの一般的なサイズに収まるように設計した。縦型と横型の2種類を用意している。横型の販売数(20年3~8月)は新型コロナウイルスの感染拡大により前年同期比128%となった。

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 開発のきっかけは、東京支店のオフィスビルを建て直す際にフリーアドレスを導入したこと。18年の春ごろから自社でも使うことを前提に開発を進め、オフィス用品の展示会などに足を運んでは、個人用ロッカーのサイズを測ったり、実際に導入している企業に見学を申し込んだりした。

 開発で重要だった点は、バッグに使用する素材の選定にあった。担当した東京MD部課長の木村博之氏は、「(他社の従来品は)バッグを直立させるための芯(しん)が紙でできていたので、表面も硬かった」と話す。そこで芯に紙以外の強くてしなやかな素材を選び、丸洗いも可能にした。耐久性を上げたことで、文具などの他にもパソコン関連ツールも収納できるようになった。

 20年2月には、ツールバッグの売れ行きが好調なことから、価格を低く抑えたポリプロピレン製「ツールバッグ 」を発売。発売後、5カ月で初年度販売目標を達成。通販サイトを通じた購入が増加したという

 「コーデュラの他にも国産帆布メーカーの生地を活用するなど、素材に着目した開発を進めてきた。文具店や文具売り場に並んでいない製品を開発したい」と木村氏は意気込む。

リヒトラブ
「ツールバッグ<ヨコ型>」。持ち手は長めで肩からかけることもできる。水筒も収納できて、そっと置いてもしっかりと自立する。価格は3980円(税別)
「ツールバッグ<ヨコ型>」。持ち手は長めで肩からかけることもできる。水筒も収納できて、そっと置いてもしっかりと自立する。価格は3980円(税別)
文具店だけでなく、ホームセンターにも置かれているという。工具も収納できる。ワッペンを貼って自分好みのデザインに改造する人も(写真提供/リヒトラブ)
文具店だけでなく、ホームセンターにも置かれているという。工具も収納できる。ワッペンを貼って自分好みのデザインに改造する人も(写真提供/リヒトラブ)
丈夫で両面に外ポケットが付いているので、レジャーでも活躍する。こちらは縦型(写真提供/リヒトラブ)
丈夫で両面に外ポケットが付いているので、レジャーでも活躍する。こちらは縦型(写真提供/リヒトラブ)
「ツールバッグ<P.P.>」。小学生のいる家庭では自宅学習の時間が増え、教科書や配布のプリントを収納するために活用する人もいるという。軽量だが、8キログラムの耐荷重がある。前面にはジャバラポケットも付いていてプリント類もファイリングできる。1350円(税別)
「ツールバッグ<P.P.>」。小学生のいる家庭では自宅学習の時間が増え、教科書や配布のプリントを収納するために活用する人もいるという。軽量だが、8キログラムの耐荷重がある。前面にはジャバラポケットも付いていてプリント類もファイリングできる。1350円(税別)

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