ひらめきブックレビュー

こんまりと心理学がコラボ 片づけでキャリアを高める 『Joy at Work』

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朝、出社してデスクの前に座ったとき、あなたは「ときめき」を感じ、仕事に前向きになれるだろうか。もしそうではないのなら、本書『Joy at Work』流の「片づけ」を試してみてはどうだろう。

本書は、身の回りのものを「ときめきを感じるかどうか」で整理する「こんまりメソッド」で知られ、日米をはじめ世界的に活躍する近藤麻理恵氏と、ライス大学経営学院教授で組織心理学者のスコット・ソネンシェイン氏との共著である。物理的なワークスペースにとどまらず、非物理的な時間や決断、人脈、チームまでも徹底的に片づけることで、自分に合ったワークスタイルを手に入れる方法を紹介している。

■残すモノを選ぶ3つの基準

デスクが雑然としていると、気が散ったり判断力が落ちたりする。あるデータによると、探し物にかける時間は従業員1人当たり年間約一週間。企業にも莫大な損失だ。とはいえ、ワークスペースは自宅と異なり、ときめかないからといって捨てられるものばかりではない。そこで近藤氏は、残すモノの基準を3つにわける。

(1)デスクに飾る家族写真など、持っているだけでハッピーな「まっすぐときめき」
(2)日々の業務で仕事に役立つ文房具など「機能的ときめき」
(3)やりとげれば信頼を築ける仕事の書類など、未来が描ける「未来のときめき」

本であれば、飾っているだけでうれしくなるような(1)の本、仕事をスムーズにしてくれる(2)の本などは必要だ。一方、人にもらったが読む予定のない本などは基準から外れる。本を片付けることで「自己発見」もある。例えば、エンジニアのケンさんは「もう少し早く家に帰れたらいい」と片づけを開始。ところが、「充実した人生」「仕事に魂を込める」といったテーマの本がたくさんあり、本来もっと仕事を楽しみ、充実した生き方を求めていたことを認識。仕事への情熱を取り戻したそうだ。

■メールも思い切って削除

スコット教授が説くのは、非物理的な分野の片づけだ。例えばデジタルデータ。PCのデスクトップにファイルが散乱している方も少なくないはずだ。デジタル文書は、仕事に必要か、将来の手掛かりや発想を与えてくれるか、ときめきを感じるかを問いかけて、すべてノーなら思い切って削除する。メールやアプリなども同様という。

仕事に関するものを片づければ、仕事に対する自分の価値観を見つめ直すことができる。結果、仕事に迷いなくエネルギーを注ぎ込む、ときめくワークスタイルを手にできるという。

読後、デスクを整理した。残ったのは「機能的ときめき」のカレンダーと「未来のときめき」の書籍のみ。脳内もメンタルも整って、片づけの効果を実感した。あとは、「まっすぐときめき」の要素として観葉植物を飾れば、もっとやる気になる気がする。片づけを通じ、働き方、そして生き方を見直す一冊だ。

今回の評者 = 前田真織
2020年から情報工場エディター。2008年以降、編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。

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