常識が通じぬ時代 問題を解くより「問う力」を鍛える『問題発見力を鍛える』

「何か考えて提案して」。最近、顧客や上司からのそんなあいまいな依頼が増えているとお困りの方は多いのではないだろうか。与えられた問題を解く「問題解決型」の発想で考えれば、あいまいなディレクションをする方に問題がある。だが、自ら問題を発見する「問題発見型」で考えれば、あいまいな依頼こそ価値を発揮できるチャンスだ。

そもそも、なぜあいまいな指示が増えているのか。不確実な時代の中で、解決すべき問題がどこにあるのか誰もよくわからないからだ。そこで、問題そのものを見つけ出すための具体的な手法を教えているのが本書『問題発見力を鍛える』。コンサルタントとして活躍し、発想法に関する『地頭力を鍛える』などベストセラーを世に問うてきた細谷功氏が、集大成と位置付ける一冊である。

話を聞きながらスマホを操作

問題発見のための思考の切り口として(1)常識を疑う(2)新たな変数を考える(3)ギャップや偏在に注目するという3つが紹介されている。「常識を疑う」は問題発見のベースになるスキルだ。例えば話をしている相手が、スマートフォンをいじり出したとする。このとき、「話をちゃんと聞け!」と憤りを覚える人も多いだろう。だが、これが常識の落とし穴だ。

その人は、話の中に出てきたわからない言葉の意味を調べているのかもしれない。あるいは、話に出てきた数字の裏付けをとっているのかもしれない。今後、メガネ型のウェアラブルデバイスなどが進化すれば、視線を泳がせながら話を聞くことが当たり前になる可能性だってある。自分にとって非常識と思われるものを見たときに「なぜ(Why)そんなことをしているのか?」と問う姿勢が、問題発見につながるのだと著者は説く。

常識を疑って成功したビジネスとしては、ウーバーなど海外のオンデマンドの配車サービスが挙げられる。これは渋滞や需給バランスによって価格がフレキシブルに変動する仕組みを採用している。「場所と乗車時間による一律運賃」というタクシー業界の前提を疑ったわけだ。

「なぜ」が選択肢を広げる

「なぜ」を使って思考を進める時には、「過去に向けて」と「将来に向けて」の2種類の問いを明確に区別することが有効だ。過去に起こった出来事について「なぜ」を突き詰めるのは、その出来事が起きた真の原因を見つけ出すためだ。因果関係がわかれば、似たようなトラブルに遭遇したときに問題解決策を立案するのに役立つ。

一方、「将来に向けて」のスタンスは発想の広がりを与えてくれる。例えば「今から年末までにAについて調べよ」と指示されたとき。まず、調べる目的は何かに疑問をもってほしい。

それは「顧客への提案のため」ではないのか? だとしたら、なぜ提案をするのだろう? 「来年度の顧客予算の確保のためだろうか」。「いや、顧客が取引先に提案できるアイデアを提供するためかもしれない」……。こんな具合に「調べることは○○だけでなく、××もあった方が良いようだ」と、目的を実現するための選択肢が広がっていく。

「なぜ」という問いが、表面の個別事象ではなく、その背景を深掘りして真の問題へ向かう手掛かりを与えてくれるのだ。変化の激しいこの時代に、正解を探す働き方は受動的だと著者は指摘する。「自ら新たな問題を見つける」という能動的姿勢の大切さに気づかせてくれる本書を、将来を切り開く武器として活用していただきたい。

今回の評者=戎橋昌之
情報工場エディター。元官僚で、現在は官公庁向けコンサルタントとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。大阪府出身。東大卒。

問題発見力を鍛える

著者 : 細谷 功
出版 : 講談社
価格 : 990 円(税込み)

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