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北海道寿都町で開かれた「核のごみ」説明会

北海道寿都町で開かれた「核のごみ」説明会

原子力発電で発生する「核のごみ」の最終処分が問題になっているって聞いたわ。処分場の受け入れを検討する自治体もあるようだけど、このまま発電を続けて大丈夫なのかな?――。「核のごみ」の処分問題などについて、滝順一編集委員が春藤ちひろさんと泉山かおるさんに解説した。

――「核のごみ」とはどんなものですか?

原子力発電はウランの核分裂で発生する熱エネルギーを使います。使い終わった核燃料には利用可能なウランが残っているほか、新たに生まれたプルトニウムという物質が含まれます。この使用済み燃料を再処理して、再び燃料として使う流れを「核燃料サイクル」といい、日本では政府の方針のもと大手電力会社などが取り組んでいます。ウランなどを回収した後の廃液が「核のごみ」と呼ばれる高レベル放射性廃棄物です。

日本はエネルギー資源に乏しく、政府は地球温暖化対策の観点からも原子力発電が必要と考えています。核燃料サイクルは資源の有効利用ともなりますが、廃棄物の処分方法が確立しないと、完成とはいえません。高レベルというだけに高い放射能を帯びており、人体や自然環境に影響のないレベルまで低減するには万年単位の期間が必要です。

日本ではガラスで固め鋼鉄製の分厚い容器に収めて、地下深くの処分場で保管する「地層処分」が検討されています。地下300メートルよりも深い地層に埋め、人間の生活圏の外に置く計画です。

――処分場の選定は進んでいますか。

政府は最終処分事業を担当する原子力発電環境整備機構(NUMO)を2000年に設立し、全国で説明会を開いています。活火山や活断層から離れているなど、処分場として適した場所をおおまかに示した地図(科学的特性マップ)も公表し、自治体の応募を待っている状況です。

原発を持つ国はどこも最終処分に苦慮しています。最も進んでいるフィンランドは使用済みの核燃料を容器に入れて最終処分する計画で、国民の合意も得て場所が決まっています。フランスは日本と同様に、再利用できる成分を取り出した後の廃棄物を処分する計画で場所は絞られています。一方、ドイツなどは場所の選定に至っていません。

――日本でも受け入れの動きがあるようです。

北海道寿都町の町長が8月、選定の最初の段階である「文献調査」への応募検討を表明しました。北海道では神恵内村でも応募検討の動きがあります。最終処分場の選定手順は3段階で進みます。候補地の地質図や過去の活動歴などを調べるのが文献調査で、問題がなければボーリング調査など第2段階の「概要調査」に移ります。最後が地下にトンネルなどを掘ってより詳しく調べる「精密調査」です。一連の調査には20年程度かかり、政府やNUMOは地元の意見に反して段階を進めないとしています。

政府は文献調査を受け入れた自治体には最大20億円を交付します。財政状況が厳しい自治体には魅力ですが、足元を見るような制度には批判や不信の声も聞かれます。

いずれにしても、応募する自治体には相当の覚悟が必要です。安全性や風評被害を巡り、住民の意見が二分されることが想定されるからです。07年には高知県東洋町の当時の町長が調査受け入れを表明しましたが、住民や町議会、県知事らの反対で撤回しました。寿都町の場合も北海道知事は反対を表明しており、町内の意見も割れています。

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