「アニサマ」成功に手応え ファンの強い一体感に驚く
バンダイナムコアーツ 副社長 井上俊次氏(17)
2005年に始まった「アニメロサマーライブ」でアニソンの盛り上がりを実感した (C)Animelo Summer Live 2005/MAGES.
市場規模が膨らんだ「アニメソング(アニソン)」ビジネスの立役者の一人がバンダイナムコアーツの井上俊次副社長です。1970年代にロックバンド「レイジー」で一世を風靡しました。井上氏の「仕事人秘録」の第17回では、「日常系」アニメや深夜アニメの立ち上がり時期を回想します。
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アニサマ開催はアニソンを取り巻くムードががらりと変わった瞬間ではないでしょうか。第1回は国立代々木競技場の第一体育館が会場でした。まだアニソンライブがそれほど多くない時期。本当に観客が入るのか心配もしましたが、太田さんは「絶対に代々木で成功させる」と。近年のアニサマでは考えられないことですが、当時は出演者も集まらなくて困りました。
それでも、蓋を開けてみれば観客席は9割くらい埋まりました。代々木競技場でのコンサートなんて経験がありませんから、ステージ上で出演者がみんな感動して泣いていました。自分たちが歌い続けてきたアニソンにこんなにも大勢のファンがいるのかって。やってきたことが間違っていなかったとわかったのです。私やスタッフも泣いていました。
アニサマの成功に勇気づけられたのはファンも同じだったでしょう。当時はペンライトがはやりだしたころでした。8000~9000人が一斉にペンライトを振る姿を見て、観客も「アニソン好きってこんなにたくさんいるんだ」と自信を持ったと思うんです。
驚いたのは、すべての楽曲をみんなで応援するアニソンファンの一体感です。JPOPの音楽フェスでは、目当てのアーティストが歌い終わるとお客さんが入れ替わる。それはそれで悪くありませんが、アニソンの場合は最初から最後までみんなで応援してくれます。これはアニソン独特で、世界共通の文化です。「アニソンのジャンルはもっと広がっていくのかもしれない」。第1回のアニサマで5時間ぶっ続けで応援してくれるファンを目の当たりにして、そう感じました。