大人の粘土は癒やし系 こねて満足、色も鮮やか
アロマ漂う商品も
20~40代の25人の女性が粘土をこね、ちぎり、夢中になって形を整える。新日本監査法人の社内サークル「ねんど部」の活動風景だ。8月に第1回を開き、11月中旬の第2回は人気粘土作家の「おちゃっぴ」さんを講師に招いて開催した。
この日のお題はクリスマスツリーとキノコと犬を組み合わせたキャラクター。はじめは「難しい」とつぶやいていた参加者たちも、次第に自らの手で立体物を作る楽しさに目覚めていく。顔の表面を作り終え目の成形に移る頃には「よしっ」と喜ぶ声が多くなった。
部員はほぼ全員が女性。「部長」の今野真奈美さんは「仕事で疲れていてもストレス発散になる」と魅力を語る。部員たちは「普段パソコンばかりなので癒やされる。陶芸ほど難しくないのもいい」「物が形になる感動を久々に味わった。子供の頃を思い出した」などと童心に帰っていた。
使用するのはアクリル系の樹脂粘土。おちゃっぴさんが試行錯誤の上に完成させ、粘土の常識を覆した。まずは発色の鮮やかさ。赤、青、黄など全7色はポップな色調。従来の粘土にありがちだった、くすんだ色合いが見られない。異なる色を混ぜると、絵の具のように溶け合った別の色が出来上がるのも特徴だ。
従来あった紙粘土や油粘土と違い、粘土同士はくっつきやすいのに、手にはくっつかない点も画期的。パーツを合体させた際の造形が容易になるだけでなく、手や作業スペースの汚れを気にしないで済むのも好評だ。
玩具メーカーのハナヤマ(東京・千代田)はこの樹脂粘土を使った創作キット「コーネル」(840円)を4月に発売し、年間目標の4万個を大きく上回る10万個弱を出荷した。トイプードル、ライオン、ペンギンなどおちゃっぴさんがデザインした動物は24種類。
「『これが作れます』という手軽さが受けている」(同社)。難易度は3段階で明示。必要な道具もつまようじのみで、作業手順を簡略化した。説明書には必要なパーツを原寸大のイラストで掲載する配慮も凝らした。
一方で造形を目的とせず、こねて香りを楽しむためだけの変わり種粘土もある。英粘土メーカーの日本法人、モードージャパン(京都市)は今年2月から、世界27カ国で220万個を売り上げたアロマ粘土「モードー」(1680円)を本格展開している。
心地よい眠りを誘う「スリープ」、集中力を高める「シンク」、ダイエット向けの「スリム」など全9種類は目的別に精油の配合を変えた。スリムならフェンネルやゼラニウムを使用。食欲を抑える効果があるとされる青基調の配色で、色彩学にも基づいている。こねるだけでよく、道具が不要なのもポイントだ。
東急ハンズ渋谷店(東京・渋谷)で、心をほぐして解放する「アンワインド」を購入したのはスイス人男性のアレックスさん(32)。「仕事や家事で忙しい。お酒を飲むよりも体に良さそう」とリラックス効果に期待していた。
帝京学園短期大学の森田麻登助教(心理学)は「手を動かす運動と粘土の柔らかさを感じる感覚が脳の中で直結することが癒やしにつながる。粘土をこねたり、伸ばしたりを反復することで安心感も得られる」と分析する。手軽に楽しめる癒やしグッズとして人気はさらに広がりそうだ。
(中川淳一)
〔日経MJ2013年11月29日付〕
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。