アマゾンに学ぶ新事業の作り方 顧客視点はこう生かす『アマゾンで私が学んだ 新しいビジネスの作り方』

新規事業やイノベーションに対して、ハードルが高いと感じる方も多いだろう。まして「アマゾン流」と聞けば、とうていまねできないと考えるかもしれない。ところが「イノベーションとは問題解決であり、誰にでも起こせる」と説き、アマゾンの新規事業のやり方を教えてくれるのが本書『アマゾンで私が学んだ 新しいビジネスの作り方』だ。

本書はアマゾンジャパン(東京・目黒)で新規ビジネス立案・立ち上げに携わってきた人物が、同社の新規事業に対する考え方や進め方を分かりやすく説明したもの。新規事業を成功させるために行っている数々の手法を、イノベーティブな組織風土の作り方、アイデアや事業計画の立て方、プロダクトを軌道に乗せる方法など具体的なステップに分けて解説。アマゾンでの学びを活かし、実際に事業を立ち上げた著者自身の実体験も交えられている。

著者の太田理加氏はアマゾンジャパンでヘルス&ビューティーやファッションカテゴリーの事業責任者を歴任。現在は定額制ジュエリーレンタルサービス会社「スパークルボックス」の代表取締役として活躍している。

ビジョンに立ち返る

本書を読んで驚いたのは、アマゾンでは各事業責任者が全員、定期的に新規事業計画を提案するということだ。しかもその際には「プレスリリース形式」を使うという。プレスリリースは通常、マスコミなど社外に向けて発信するもの。しかし、同社では社内で、「未来のお客様に向けて」リリースを書くのだという。そうすることで、新サービスが顧客にどんな風に受け止められるかが具体的に想像できる。アイデアを顧客視点からブラッシュアップするのに有用だと、著者は述べている。実際に、生鮮食品を扱う「アマゾンフレッシュ」の立ち上げ時にも、社内リリースが活用されたという。

また、ビジョンに立ち返ることの重要性が随所に語られている。近年はサブスクリプションなど新しい手法が注目されがちだが、ビジネスで大切なことはビジョンであって手段ではない。別段新しいテクノロジーに頼らずとも、既存の課題を解決したり、細部にこだわることでビジョンは達成できる、と説く。例えば、アマゾンには「ユニーク・ディティール・ページ」という仕組みがある。これは1商品の説明は1ページに集約するもので、複数の販売者がいても、新品や中古の違いがあっても同じページに表示されるもの。顧客はその商品を買う際にその1ページのみを見ればよいため、ショッピングのしやすさにつながっている。この仕組みは当初、競争を避けたい販売者の抵抗もあったそうだが、アマゾンは「顧客体験」というビジョンを追求し実現したのだ。

本書には「ありえない2つの言葉をかけあわせる」など、イノベーティブな発想をするためのアマゾン流ヒントも多く紹介されている。新規事業に限らず、普段の仕事を改善していくためにも有効だろう。

今回の評者 = 倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

アマゾンで私が学んだ 新しいビジネスの作り方

著者 : 太田 理加
出版 : 宝島社
価格 : 1,980円 (税込み)

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