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「オンライン小学校作りたい」 学歴社会ひっくり返す

探究学舎 宝槻泰伸塾長インタビュー

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NIKKEI STYLE

新型コロナウイルスは教育にイノベーションをもたらすきっかけともなった。学校現場も教育産業も、オンラインでの学びに向けて大きく動き出している。高校を中退した後に京大に入り、受験指導ではなく子どもが好きなことを見つけるための塾「探究学舎」を起業した宝槻泰伸さんに、学びの未来像についてインタビューした。

――東京・三鷹の教室を使って対面で生徒を熱狂させていくスタイルから、コロナ禍で一気にオンラインの世界にかじを切りましたね。切り替えが素早いですよね。

オンライン学習を実現したいという強い使命感は、実はコロナ前から持っていました。でも、僕のビジョンが社員に伝わらず、社内で「社長がなんか言っているよ」みたいに見られていて、すごく悔しかったんですよね。そういう中でコロナ禍があり、このタイミングをとらえて「オンラインでいく」と宣言しました。

――オンラインのほうが事業としてはスケールするからですか。

それはそうですが、スケールというのはこちら側の理屈であって、重要なのは参加してくれる子どもたちに革新をもたらすことです。オンライン化を徹底的に進めることで僕が最終的になし遂げたいと思っているのは、日本を学習歴社会にすることです。学歴社会から学習歴社会に転換したいというのがあって、これは極めて革新的な社会制度の変更なんです。

――卒業した学校がものを言う「学歴社会」ではなく、何を学んだかが意味を持つ「学習歴社会」に転換したい、と。

確かに学歴は一定の信頼性もありますし、これまで十分に機能してきたものだと思うのですが、学歴が唯一という考え方は徐々に形骸化していますよね。ただ、現状で代替案が生み出されていないから、学歴にしがみつかざるを得ない。したがって教育の目的は高学歴を勝ち取るということに、どうしたってなるわけです。それでつまらない学習がはびこるわけですよ。ここのすべての世界観をぶっ壊さない限り、いい学びというのは、つまり人生を豊かにする学びというのは、社会に浸透しないと思っていて、そのときにポイントになるのが僕は学習の履歴だと思っています。

――なるほど。もう少し説明してもらえますか。

自動的にその子の学習履歴がオンライン上で記録されていくプラットフォームがまず必要になります。すべての子どもたちがデジタルプラットフォームの上で学習行動を積み重ねるということが現実になったら、学習履歴は容易に取ることができます。そうなれば、人と人、あるいは組織と人が、主にキャリアの面からですが、マッチできるようになると思いませんか?

こういう体験やこういう志向性やこういう価値観を持っている人間なのであれば、うちで働く、あるいは私と一緒にやるのに相性がいいよね、みたいな。学歴というある時点に限った情報よりも、学習履歴という時間軸のある縦の情報のほうが、本質的で深い情報になるはずです。学習履歴社会の実現で人類全体がより自由になれる。僕の基本哲学ですね。

東大、京大の意味は世代によって変化する

――学習歴社会への移行は、コロナがきっかけで考えついたのですか。

20歳くらいのころから、何が教育を変えるシフトレバーなのかをずっと考えてきました。とくに何かきっかけがあったというよりは、思考の積み重ねの中で出てきたことですね。2016年くらいから本格的に考えるようになりました。実は、うちの父は教育の起業家で、たぶん世界でもいち早くコンピューターを使った個別学習というものを事業化した人物です。そういう父がいたので、彼が何を思って何を考えて、なぜそういう仕事をしていたか、みたいな思考の積み重ねを聞いてきているわけです。

――教育起業家として、お父さんの影響を相当受けているのですね。

父の成功とか失敗とか、限界とか、技術的な問題、インフラの問題とか、いろいろわかるじゃないですか。父は団塊の世代で、ザ・学歴社会の当事者です。250万人くらいの人口が一つの学年の世代にいて、まだ貧しさが身近にある中で、豊かになるためには狭い門をくぐり抜けていく必要があった。学歴が有効に機能する時代ですよね。

――私も団塊ジュニアなので、その感覚はわかります。

ちょっと歴史をふり返ってみましょう。団塊世代は学歴が有効だった。ではそれ以前の世代はどうだったかのか。大正や昭和初期などは、大卒は一般の庶民とは全く異なる本当のエリートだったはずです。

つまり、東大とか京大に入ることの意味は、世代によって変わってくるということです。父の昭和の団塊世代、私、そして私たちの子どもの世代では違うはずです。学歴というものを獲得させるための学習支援はもう終わりに近づいていると、僕はこの世代として強く思っているということです。

――以前は学歴のことも結構大事だと思っていらっしゃったのではないですか。

おっしゃる通りです。教育の成果を学歴以外で世間に向けて説明することは難しいのではないかという、学歴信仰の呪縛から抜けられていない時期がありました。実際、探究学舎を開校した当初は高校生をターゲットにしていて、かつ、受験勉強を指導していました。でも今は小学生に探究学習を教える、好奇心に点火するような教室に変わっているので、完全に対極にあります。

――ただ、私も親ですし、やっぱり子どもはいい学校に入ってほしいとか、親の気持ちは結構揺れます。

そうですね。じゃあストレートに言ってしまいますが、まず皆さんの子どもたちは大学へ行かなくてもよくなるでしょうね。好きなことを仕事にするとか、仕事を通して社会貢献するとか、社会的な変革を作り出すということが、子どもたちにとって非常に重要なビジョンなわけですが、そうしたことは大学に行かなくても実現できる。

極端な言い方をすると15歳とか16歳で起業すればいい。自分の好きなものを実際に社会価値に変換して、誰かに買ってもらうという体験をすればいいと思っています。そこからのフィードバックからの学びのほうが、大学で学ぶことよりもはるかに大きいと思うんですよ。そして今は、その気になればスマートフォン1台で可能な時代になっているわけです。

たとえば探究学舎の子どもに、小4のレウォンくんという子がいて、元素かるたを作って、クラウドファンディングで400万円集めたわけです。本当に普通の子なんですよ。今は小さな資本、個人的なクリエイティビティで、インターネットを使ってファンを獲得するというビジネスが自然なやり方になっている。皆さんの子どもたちが10年後、20年後、やっぱり大手企業がいいと言うかどうかは、わからないですよ。

――仕事の作り方も選び方も、たぶん大きく変わってくるんだろうなと思います。

もちろん今僕が言ったようなことは、社会の中でメーンストリームだとは思っていません。妄想と言われれば妄想なんですけど、でもこういう考え方がもし、親とか子どもにとって「なるほど」と思う部分があれば、さっき言ったように大学へ行くことは意味がない。

「変わらない」学校への怒りが原動力

――探究学舎は今後、どのように展開していく計画ですか。

まずオンライン学習については、学習履歴を取るためのプロダクトの開発に取り組みます。そして、数年後には子どもたちの一つの選択肢として「オンライン小学校」を立ち上げたいと考えているんです。

朝から夕方までカリキュラムを提供するし、あえて普通に算数とか国語もやります。親の立場からすれば、算数とか国語がない小学校というのは不安。元素とか海洋生物には熱中しているけど、この子、漢字の1つも覚えていないとかなると、ザワザワってするので。

そのときは経済産業省と組みたい。従来の文部科学省の所管の小学校VS経済産業省バックアップの民間オンライン小中学校という構図を作って、議論を喚起できれば面白いと思っています。

オンライン小学校は、全国47都道府県に校舎をつくることもできると思っています。例えば、お寺や公民館を校舎にしたっていい。鎌倉だったら海の家が校舎になっていたり、軽井沢だったら森の研修所が校舎になっていたり、北海道だったらスキー場が校庭になっていたりしたら面白いですよね。

――おおむね一つの学年が全国に100万人程度いるとして、オンライン小学校は最初のキャズムがどれくらいで、はねた後ってどれくらいのイメージを持っていますか?

まずは1%、1万人じゃないですかね。1万人取ったら10万人みたいな感じになって、10万人になると完全に誰も無視できない存在という感じですね。最初の1万人までのところが一番大変です。ただ、探究学舎の潜在顧客は現状、1万世帯ぐらいに達しているとみていますので不可能ではない。だからここからがまた本当の意味での勝負です。

小学校の構想は数年後ですけど、今年の9月から、これまで小学生を対象としてきた探究学舎のカリキュラムに、中高生向けの授業も用意することにしました。環境問題や人種問題など、この世界にある憤りや葛藤に触れ、世界の課題を探求してほしい。リアルな世界に関心を持って、当事者意識を持ってほしいんですよね。哲学編からやります。

――お話を聞くにつけ、どうも宝槻さんの根っこに怒りのようなものを感じるのですが、その正体はなんですか。

いい質問ですね。やっぱり、学校というものに対する怒りかな。例えば、とんかつを食べに行ってちゃんと揚げられていなかったら怒りますよね。学校はおいしい学びを子どもたちに提供する責務があると思うのですけれど、出てきたものが本当にまずかったりする。でもそのことに反省がないというか。「失礼しました、揚げ忘れていました」と言わないでしょ? 「申し訳ありません国語の授業が面白くなさすぎて」とか言わないでしょ?

――怒りを事業に昇華しているわけですね。

僕が好きな話で、宇宙の歴史において、天動説を唱えていた古代の天文学者と、それを宗教的な意味合いで活用した教会というのがあったわけですね。地球が中心だと言って、人々にそういうドグマを押し付けてきたわけじゃないですか。それを100年くらいかけてコペルニクスとかケプラーとかガリレオとかがぶち壊して、中心は太陽だったという真実を世に広げてくれたという、ここに僕は一番カタルシスを感じる。すなわち学校とは教会であり、学習指導要領とは天動説です。もうすべてひっくり返してやろうと思っています。

(聞き手 桜井陽 安田亜紀代)

宝槻泰伸(ほうつきやすのぶ)
幼少期から「探究心に火がつけば子どもは自ら学び始める」がモットーの型破りな父親の教育を受ける。高校を中退し京大に進学。次男、三男も続き、「京大三兄弟」となる。2011年、東京・三鷹に探究学舎を開校。歴史・宇宙・元素・建築・ロボット・経済などをテーマにした授業を独自に制作。国内や海外から親子が集まり、19年度にはのべ7000人の子どもたちが授業に参加。2019年3月テレビ番組「情熱大陸」に出演。2020年4月から新たにオンラインでの通塾事業を1000人でスタート。のべ約3500人が受講中(20年5月29日時点)。5児の父。

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