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日本政策金融公庫総合研究所 井上考二主席研究員

日本政策金融公庫総合研究所 井上考二主席研究員

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中小企業や小規模事業者の経営が苦境に立たされている。国や地方自治体による営業自粛要請を受け、対面が多い飲食業や宿泊業などで特に売り上げが激減。景況感が大幅に悪化している。リーマン・ショックを上回るとされる経済停滞をどう乗り切ればいいのか。中小企業の経営に詳しい日本政策金融公庫総合研究所の井上考二主席研究員は「接客を見直し、これまでのような(密閉・密集・密接の)3密を避ける働き方、コロナ下でも売り上げを伸ばす新しい手立てを考えることが必要。ビジネスモデルの改善が欠かせない」と指摘する。

◇   ◇   ◇

――コロナ禍で中小・小規模事業者の置かれた経済環境は。

「当公庫の取引先を対象にした直近の景況調査では、極めて厳しい状況にある。2020年4~6月期の全業種の業況判断DI(業況が『良い』と答えた企業の割合から『悪い』と回答した企業の割合を差し引いた値)は、従業員が20人以上の中小企業でマイナス58.7、従業員が20人未満の小企業に至ってはマイナス73.7と、08年秋のリーマン・ショックの時期よりも大幅な落ち込みだ。特に小企業の業種別をみると、飲食店・宿泊業がマイナス93.2と、1~3月期のマイナス58.5から急激に悪化した。もともと売り上げが良くなかったところに、営業自粛要請がきて事業活動にとって大きな制約を余儀なくされている。経営上の問題点を聞くと、小企業の場合、『売り上げ不振』が最も多く65.6%。1~3月期の48.6%から跳ね上がった」

収益手段に新しい選択肢を

――倒産や廃業に追い込まれる企業・事業主も増えています。

「多くの中小企業が経営者の高齢化、後継者不足という課題を抱えている。経営が続けられるうちは細々とやっていたが、コロナが追い打ちをかけ、この際、会社をたたんでしまおうという動きが出ているようだ。コロナと共生していく経営のあり方を模索する経営者もいるが、対応できない企業はジリ貧になっている。経営を助ける緊急の資金繰りの支援は必要だが、それだけでなく、コロナ禍で新たに収益を上げる後押しも支援機関には求められるだろう」

――具体的には。

「簡単にはいかないが、(飲食店・宿泊業などの)対面営業が中心の今までのような3密の業種では、やり方を変えないとこれからは続かない。例えば飲食店では、通販の活用、宅配、移動車販売など、店舗だけでなく複数の販売手段をもつことが重要だ。宿泊業では、単に泊まってもらうだけでなく、日中の客室の稼働率を高めるため貸会議室などとしてスペースを提供する方法も考えられる。今までの収益手段のほかに選択肢が必要になる」

取引先や顧客にファンを得る

――中小企業の経営についてアドバイスは。

「一企業でできることは限られている。思い切って外部の支援を活用することだ。国や自治体の支援策だけでなく、取引先、場合によっては一般消費者にも助けたいと思ってもらえるファンを得ること。インターネットで不特定多数から資金を調達するクラウドファンディングに加え、飲食店であれば、将来利用できるチケットを先払いの形で発行するケースもある。感染対策と経営の両立を図りながら、コロナ禍における新たなビジネスモデルを考えていくしかない」

「また、要請を受けて営業自粛に至った場合、休業期間中にできた時間を活用してはどうか。営業をどうすべきか。従業員をどう育成するか。今後の取り組みを考える良い機会にもなる」

(聞き手は白山雅弘)

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