2020年、テレビCMに大きな変革が起きている。テレビCMが1枠単位で購入可能になり、出稿の門戸が広がった。さらに20年3月には視聴率が24年ぶりに大幅刷新され、視聴率データは個人にひも付く形になった。テレビCMがデジタルマーケティングに限りなく近づきつつある。これを商機と捉え、ネット広告代理店がこぞってテレビCMの支援事業に参入。さらに異業種から名乗りを上げたのがラクスルだ。

ラクスルが提供するテレビCM効果最適化サービス「ノバセル」の動画広告は、テレビCMの効果は分からないと言い切る部下に対する社長の悲痛な叫びが印象的だ
ラクスルが提供するテレビCM効果最適化サービス「ノバセル」の動画広告は、テレビCMの効果は分からないと言い切る部下に対する社長の悲痛な叫びが印象的だ

 「(テレビCMの)効果はあったの?」と社長が問いただすと、質問された社員は臆面もなく「分かりません」と回答。「いったい(テレビCMに)いくら払っていると思っているの?」と社長の悲痛な叫びがこだまする。

 社長と部下の衝撃的なやりとりが印象的なこの動画。ラクスルが20年4月23日に提供を始めたテレビCM効果最適化サービス「ノバセル」の広告だ。ラクスルといえばオンライン印刷サービスで知られる。そのラクスルはなぜテレビCM効果最適化サービスに参入したのか。そして全くの異業種でありながら参入できたのはなぜか。

 電通が毎年発表する「日本の広告費」、19年の調査で初めてインターネット広告費がテレビメディア広告費を上回り2兆円を超えた。一方、テレビメディアは前年比2.7%減の1兆8612億円、3年連続で減少と振るわない。

 さまざまなデータで多角的に効果測定ができるデジタルマーケティングの普及とともに、十分なデータが取得できないテレビに対して広告主が不満を抱き始めた。「デジタル広告の進化によりターゲットに効率的に広告を到達できるようになる中で、テレビのデータの少なさに不満を持つことは当たり前の流れだった」と日本アドバタイザーズ協会電波委員会の小出誠委員長は振り返る。

 そしてこう続ける。「社内でテレビを使うことに対して逆風が吹いているケースが大きい。経営層や事業部門から『なぜ、テレビCMを使う必要があるのか』と問われたときに、宣伝担当は肌感覚でテレビCMはマーケティングに必要だと感じていても、データ不足で反論できない。肩身が狭いという状況が増えている」。メディアの王者だったはずのテレビはその地位を危ぶまれつつある。

新型コロナで大打撃 売上高は40%減に

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

NIKKEI STYLE

1
この記事をいいね!する
この記事を無料で回覧・プレゼントする