横塚 うーん、カラフルだったり、きれいだなと思ったりするものをあげていますかね。

富永 菊の花ってきれいですよね。でも横塚さんはひょっとして投稿しないんじゃないでしょうか。同じ「きれい」でも自分の中に線引きがあるはずなんです。では、その線引きはどこにあるのかを自問自答するクセをつけておくと、自分自身のことがだんだんとクリアに見えてきます。SNSをする意味は、そういうクリアな自分を外に向かって開放していくということでもあるんです。

横塚 なるほど!SNSは価値観の集合体ですね。

富永 価値観の集合体という言い方は、少し注意が必要です。その人の価値観の全てがSNSに出ているわけではないので。例えば、私は食事はおなかいっぱい食べないと嫌なタイプですが、そこはあまり表に出したくない。でもおいしいワイン飲んだというのは投稿したくなる。どっちも同じ自分です。陰と陽みたいな話で、SNSにあがるのは基本的に陽のことばかりです。

私が尊敬する行動経済学者の米デューク大学のダン・アリエリー教授がSNSについて面白いことを言っていました。「SNSでは全ての人が自分より幸せだと感じるバイアスがある。それを見て自分が不幸だと思わないほうがいい」と。そういったバイアスに気付くことができるので、マーケティングを志望しているかどうかにかかわらず、若いうちに行動経済学を学んでおくのはお得です。人間の日々の意思決定がいかに非合理か実感できますから。会社に入ってからも、人と自分を比べて落ち込んだりとか、変に振り回されることもなくなります。

マーケターは「褒められない」

横塚 私はいまインターンでマーケティングの業務をしているなかで、営業のようにわかりやすい数値目標がなくて、自分は成長しているのか、自分をどう評価していったらいいのかって、モヤモヤすることがあります。

富永 マーケティングの仕事は基本的に社内ではあまり褒められません。上司や同僚の好みに沿った形で成功すると、「ほらね」って言われるし、嫌いなことで失敗すると「そらみたことか」と言われる。そういう特性を理解したうえで、若いうちは社内だけではなく、社外のフィードバックを聞きながら自信をつけていくのがいいかなと思います。

横塚 私も将来マーケターとして活躍したいと思っているのですが、良いマーケターとは、どんな人だと思いますか。

富永 子育てをしていると、子どもから「パパ、空ってどうして青いの?」といったことをよく聞かれるんです。まずこの「なんでだろう?」と疑問を持てる好奇心が第一。そして、こうした疑問に仮説を立てられることも大事です。良いマーケターになるには、5歳児みたいな好奇心と、それに理屈をつけられる力が必須です。

それから人間に興味があることも重要です。マーケティングには色々な仕事がありますが、調査も商品開発も宣伝も、全部相手にしているのは人間なんです。どんなコミュニケーションや刺激を投げたら、どんな反応が返ってくるかを予測できることが大事。社会学や心理学が好きな人が向いている気がします。

横塚 富永さんが尊敬するマーケターはいますか。

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経験で審美眼を鍛える