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5歳児並みの好奇心が必須 良いマーケターになる条件

プリファード・ネットワークス執行役員CMO 富永朋信さん

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NIKKEI STYLE

学生が様々な分野のトップランナーにインタビューする企画。今回はマーケティングの第一人者である富永朋信さんに、マーケター志望の立教大学4年、横塚奈保子さんがインタビューした。西友やピザ宅配のドミノ・ピザ ジャパンなどでマーケティング責任者を歴任した富永さん。現在は開発したスパコンが世界ランキング(エネルギー効率部門)首位となったプリファード・ネットワークスのCMO(最高マーケティング責任者)を務める。人間は合理的ではないという前提で個人の意思決定を分析する行動経済学の知見を取り入れ、「マーケティングの本質は人間理解にある」と言い切る富永さんに、良いマーケターの条件を聞いた。

SNSは不幸を感じやすい?

横塚 私は将来マーケターになって、ちょっと不便なことを解決したりすることで人を幸せにできたらいいなと考えてきました。最近はそもそも人は何に幸せを感じるのかということに興味があります。新型コロナウイルスによって「幸せ」の形が変わったようにも感じます。富永さんはどのように思っていらっしゃいますか。

富永 人が幸せを感じるポイントは基本的には変わらないと思います。何かを達成したり、感謝されたりしたら変わらずうれしいですよね。一方で、コロナによって人が幸せを感じるトリガー、つまりきっかけのようなものが大きく変化しました。私自身、今まで当たり前のようにできていた「人と集まること」は、実はとても幸せなことだったんだと実感しています。

行動経済学によって、もう少し説明してみましょうか。例えば、貯金が100万円の人が30万円もらえたら、飛び上がるぐらいうれしいですよね。でも貯金が5000万円の人であればうれしさはそこまでではないでしょう。同じ30万円でも、ものさしが違うと受け取るインパクトも変わる。物事の価値は絶対ではなく、相対的だということです。心の持ちようによって、ある出来事が幸せになったりそうではなくなったりします。

横塚 ものさしは小さかったり短かったりするほうが、幸せを感じやすいということでしょうか。コロナがあったとはいえ昔よりも便利で、私たち若い世代のものさしは大きくなっているのかもしれないなって思いました。

富永 そうかもしれないですね。最終的には自分で決められたという実感を持てることが、私は幸せの根源だと考えています。行動経済学的に人間を見ていくといろいろなことが見えてくるんですよね。

別の話をしてみましょうか。例えば、同調圧力って感じたことないですか? 友達とご飯にいくときに、自分は焼き肉がいいけど、イタリアンになっちゃったとか。これって笑い話みたいだけど、結構あることですよね。同調圧力に従うのは人間の本能に根ざしていると考えられていますが、自己決定できていないとストレスを感じてしまう。いま自分はなぜストレスを感じたのか、同調圧力に従っているのではないか、などと意識的に自問自答する習慣をつけておくといいかもしれません。

横塚 確かにSNSでも、ちょっとした同調圧力とか、疲れを感じることがあります。

富永 横塚さんはインスタグラムにあげる写真とあげない写真はどのように線引きしていますか?

横塚 うーん、カラフルだったり、きれいだなと思ったりするものをあげていますかね。

富永 菊の花ってきれいですよね。でも横塚さんはひょっとして投稿しないんじゃないでしょうか。同じ「きれい」でも自分の中に線引きがあるはずなんです。では、その線引きはどこにあるのかを自問自答するクセをつけておくと、自分自身のことがだんだんとクリアに見えてきます。SNSをする意味は、そういうクリアな自分を外に向かって開放していくということでもあるんです。

横塚 なるほど!SNSは価値観の集合体ですね。

富永 価値観の集合体という言い方は、少し注意が必要です。その人の価値観の全てがSNSに出ているわけではないので。例えば、私は食事はおなかいっぱい食べないと嫌なタイプですが、そこはあまり表に出したくない。でもおいしいワイン飲んだというのは投稿したくなる。どっちも同じ自分です。陰と陽みたいな話で、SNSにあがるのは基本的に陽のことばかりです。

私が尊敬する行動経済学者の米デューク大学のダン・アリエリー教授がSNSについて面白いことを言っていました。「SNSでは全ての人が自分より幸せだと感じるバイアスがある。それを見て自分が不幸だと思わないほうがいい」と。そういったバイアスに気付くことができるので、マーケティングを志望しているかどうかにかかわらず、若いうちに行動経済学を学んでおくのはお得です。人間の日々の意思決定がいかに非合理か実感できますから。会社に入ってからも、人と自分を比べて落ち込んだりとか、変に振り回されることもなくなります。

マーケターは「褒められない」

横塚 私はいまインターンでマーケティングの業務をしているなかで、営業のようにわかりやすい数値目標がなくて、自分は成長しているのか、自分をどう評価していったらいいのかって、モヤモヤすることがあります。

富永 マーケティングの仕事は基本的に社内ではあまり褒められません。上司や同僚の好みに沿った形で成功すると、「ほらね」って言われるし、嫌いなことで失敗すると「そらみたことか」と言われる。そういう特性を理解したうえで、若いうちは社内だけではなく、社外のフィードバックを聞きながら自信をつけていくのがいいかなと思います。

横塚 私も将来マーケターとして活躍したいと思っているのですが、良いマーケターとは、どんな人だと思いますか。

富永 子育てをしていると、子どもから「パパ、空ってどうして青いの?」といったことをよく聞かれるんです。まずこの「なんでだろう?」と疑問を持てる好奇心が第一。そして、こうした疑問に仮説を立てられることも大事です。良いマーケターになるには、5歳児みたいな好奇心と、それに理屈をつけられる力が必須です。

それから人間に興味があることも重要です。マーケティングには色々な仕事がありますが、調査も商品開発も宣伝も、全部相手にしているのは人間なんです。どんなコミュニケーションや刺激を投げたら、どんな反応が返ってくるかを予測できることが大事。社会学や心理学が好きな人が向いている気がします。

横塚 富永さんが尊敬するマーケターはいますか。

富永 マーケターではないですが、亡くなってしまったゲームクリエーターの飯野賢治さんは私にマーケティングについての示唆を与えてくれた方です。音だけのゲームなどが有名で、作品も本人もちゃめっ気にあふれていました。望遠鏡のようにびゅーんと遠くまで見渡すときもあれば、顕微鏡のようにミクロの世界にフォーカスすることもあって、その振れ幅が魅力でした。

飯野さんに出会ったのは日本コカ・コーラで、携帯電話に連動した自動販売機システム「Cmode」の企画をしていたときです。自販機メーカーから出てきたデザインが違和感のあるものばかりで、プロジェクトマネジャーだった私はその違和感をうまく説明できなくてプロジェクトが難航していたんです。そのときに途中からプロジェクトに参加したのが飯野さんでした。

飯野さんは自販機をメディアとして考えたときにどうあるべきかという本質を、ぱっと言い当てたんです。「普通の自販機のモードと、携帯電話と連動しているときのモードと2種類のモードが1つの自販機に入っているということが、一目でわからないといけないはずです」と整理した。デザインの力やメディアとは何かを教えてもらった。こんな経験は後にも先にもなくて、今でも仕事の礎になっています。

経験で審美眼を鍛える

横塚 そんな人にはどうやったらなれるのでしょうか。

富永 勉強も大事だけど、どこかに行ってみるとか人に会ってみる、何かを使ってみるといった経験も大事です。そうすることで、勉強だけでは見えてこない複雑なストーリーが手に入り、それによって自分の審美眼があがっていきます。審美眼を鍛えるには、たくさん経験をして自分の中で比較できる対象を増やすしかない。

横塚 審美眼、なるほど!マーケティングの仕事で、美しいものと美しくないものってあるんでしょうか。

富永 難しいことを聞きますね。

横塚 今インターンをしているベンチャー企業は化粧品を販売しているのですが、化粧品業界だとコンプレックスに訴えかけるような広告も多いので、そういうことはあまり自分はしたくないし、美しくないのかなと思いました。

富永 確かに人の弱さにつけ込むのは美しくない。一方で、人が何かにモチベーションを感じてくれるようにマーケティング戦略を設計することはビジネスの範囲だと思う。その境界は曖昧です。

美しさは2種類あると思います。まずわかりやすいのは、友情とか愛とか誰もがポジティブな感情で受け入れられるコミュニケーションは一般的に美しいですよね。全ての企業がそれでやっていけたらいいけど、それは難しい。なぜなら美しいだけでは人の記憶に残らないから。

もう一つは、メッセージにインパクトがあって、これってなんだろうと思わせたあとに、なるほどこういうことか、という種明かしがあるようなもの。驚きと納得のギャップの幅、そのストーリーテリングが見事であればあるほど人の心に残る。私の考えでは、マーケティングが具備すべき美しさというのはそういうところにあると思うんですよね。

SNSで陰と陽という話をしましたが、前提として人間には二面性があるということを理解していないと、驚きのストーリーは作れない。それはマーケティングだけではなくて営業などの仕事も本質は同じです。仕事の真ん中には人間理解があると私は思います。

(文・構成 安田亜紀代)

富永朋信(とみなが・とものぶ)氏
1992年コダックに入社。日本コカ・コーラなど9社でマーケティング関連職務を経験。このうち、ソラーレホテルズアンドリゾーツ、西友、ドミノ・ピザ ジャパンでCMO。西友では同社のイメージを一変させるキャンペーンを連発した。19年にAI(人工知能)開発のプリファード・ネットワークスで執行役員CMOに就任。著書に「『幸せ』をつかむ戦略」(日経BP)など。

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