クッキーや納豆…ひたすら「一品」食べ放題
24歳記者、3店で記録更新
東京・池袋の商業施設、「Esola池袋」地下一階に、クッキー専門店「アントステラEsola池袋店」がある。9月下旬の開店からすぐに行列ができる人気店になった。880円を支払うと、1時間にわたって約16種類のクッキーが食べ放題(ワンドリンク付き)になるのが売りだ。
「自分のペースで楽しく食べられればいい」(19歳女子大生)という女性客が多い中、これまでの記録である30枚を目指してチャレンジを始めた。まず食べたのは「チョコチップクッキー」。さくさくとしながらもしっとりとした食感でおいしい。運営するアントステラ(東京・渋谷)によると、「濃厚な味わいに仕上げるために、バターをふんだんに使っている」という。
最初は快調に食べ進んだが、15枚を過ぎたあたりからスピードが落ちてきた。直径は7センチと大きい。最初はおいしいと感じた甘さも単調に感じてくる。とはいえ狙いは記録更新。普段、ご飯を2杯や3杯おかわりする胃袋には自信もある。最後は水の力も借りて33枚を食べきった。新記録だ。
次に挑んだのは「納豆工房せんだい屋 池尻大橋店」(東京・世田谷)。780円のごはんやみそ汁などがついた定食を注文すると、8種類の納豆が食べ放題となる。時間は午前11時から午後3時までだ。
挑戦開始。大の納豆好きということもあり、15パックまで一気に食べ進んだ。食事を共にした、この日が3回目という26歳の男性会社員は「納豆の食べ放題は他にない。価格も安いので、つい来てしまう」と話す。運営するせんだい(山梨県笛吹市)によると納豆はすべて自社製だという。
従来記録は34パック。「余裕で記録更新だ」と高をくくっていたが、次第に口が動かなくなる。最初は珍しさから大粒の納豆ばかり食べたが、作戦を変更。比較的食べやすい小粒に切り替えた。最後は「ひき割り」を水の力で流し込み35パック。記録更新だ。
いずれの単品食べ放題も狙いは話題づくり。アントステラは「人通りの多い立地で知名度を高め、他店への波及効果を期待している」という。せんだい屋は工場に近い山梨県の店では、納豆の詰め放題イベントをしている。だが、「都内に納豆を大量に送ると採算が合わない。納豆がさほど必要ない販促策として食べ放題を選んだ」という。
単品食べ放題、最後は東京・神田の「THE・有鳥天酒場」。店は30~40歳の仕事帰りの会社員であふれる。お通しと料理、飲み物を注文すると100円で鶏肉の空揚げが食べ放題になる。
ルールはこれまでの2店と異なり、「空揚げだけ食べるのではなく、違う食事や飲み物も注文してほしい」(店長の櫻井隆央さん)。指示に従い、冷やしトマトやビールなどもあわせて注文した。空揚げは最初は3個運ばれてきて、その後のおかわりは2個ずつ。2回ほどおかわりをすると「他の注文をお願いします」との声がかかる。
客の中には「あのペースでおかわりを催促されたら、食べ放題のお得感はない」(28歳会社員)との声もあったが、単なる「出血サービス」にせず、採算を確保するためだという。単品食べ放題にしたのは「食材を大量に仕入れることで調達コストが抑えられる」ためだ。
これまでの記録は46個。アルコールという「ガソリン」のおかげで、一気に食べ進むことができた。さほど苦しさを感じることなく50個、約1・8キロを食べ切った。
振り返ってみれば、3店すべてで記録を塗り替えてしまった。取材したことで狙いの話題づくりには一役買ったかもしれないが、自分のような大食漢がどんどん来店すると店側は大変かも、と少し心配になった。
(出口広元)
[日経MJ2013年11月1日掲載]
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