佐々淳行の『平時の指揮官 有事の指揮官 あなたは部下に見られている』にも影響を受けました。危機管理の専門家による組織運営の実践的なノウハウを述べています。

この本に出てくる「スマートで目先が利いて几帳面(きちょうめん)、負けじ魂、これぞ船乗り」という旧海軍士官たちの間で言い伝えられていたモットーは、好きな言葉です。古くさいかもしれませんが、学徒出陣で船に乗っていた父の影響でしょう。すっと腹に落ちました。

現場の長になったばかりの社員に推薦書を聞かれることが多いのですが、この本や上村嵐の『現代組織に活かす海軍の「士官心得」』を薦めています。表現の違いこそあれ、梅原先生のリーダー論と重なっていると思います。

今年4月にグループ最高経営責任者(CEO)から会長になり、自分の時間に少し余裕ができた。

若いころから絵画を見るのが好きです。時間ができれば美術展に通っています。ずっと絵は感性で見るものだと考えていたのですが、木村泰司の『名画の言い分』を読んだときは「目からウロコ」でした。歴史観や宗教観に沿って絵が発しているメッセージを読み取るのが重要だというのがわかり、絵を見るのがより楽しくなりました。日本人は「ルーヴル美術館よりもオルセー美術館の方がいい」と言うことがありますが、フランス人の前では決してそんなことを言ってはいけないこともこの本を読めばわかります。

昔も今も、就寝前の習慣になっている読書が最大の楽しみです。別の世界に入ることで、明日に向けて気持ちが切り替えられます。ジャンルにはこだわりませんが、フィクションよりノンフィクションのほうが好きですね。新聞を開けば、まず新刊の広告に目を通しますが、面白すぎる本に出合うのがリスクです。深夜の2時、3時まで眠れなくなってしまいますから。

(聞き手は編集委員 川崎健)

[日本経済新聞朝刊2020年8月1日付]