――2月に新たな遠洋漁船「第八新生丸」を竣工しました。

「高級魚『メロ』を南極海でとります。日本の遠洋漁業のライセンスで漁ができるのですが、漁場には氷が張っているところがあるので、氷の中にも入っていける船をつくりました。メロは米国や中国でよく売れます。オーストラリアのグループ会社でも新たな船を造るなど、効率を高めるための投資を続けています」

――マルハニチロは2010年、クロマグロの完全養殖に民間で初めて成功しました。今後、養殖事業をどう展開していきますか。

「天然の水産資源は世界的に3割が乱獲と言われます。6割はこれ以上、漁獲を増やすといけない状態です。余裕のある資源は1割に達しません。これからは養殖をやっていくしかない。通常のマグロの養殖は、天然のマグロのこどもをとって大きくしますが、完全養殖は卵からふ化させるので、天然資源に依存しません。サステナブルな経営戦略を進めるうえで象徴的な取り組みです。ただ簡単ではなく、通常の養殖よりも育てる期間が長く、コストも膨らみますがやり続けます」

――15年に、完全養殖マグロの商業出荷を開始しました。顧客の反応はどうですか。

「大手量販店も取り組みを評価してくれますが、こうした商品の付加価値に対し、消費者がお金を払ってくれるかどうかが課題です。まだ日本では付加価値を感じてもらえず、養殖も完全養殖も同様の値段です。いまはコロナの問題で休止していますが、付加価値を認めてくれる欧州に出荷を始めました」

――安定して稼げる事業に育てるまでのハードルは高そうですね。

「当社は今年、創業140周年です。当社がずっと依存してきた天然資源を枯渇させるわけにはいきません。完全養殖のようなことに力を入れないと(企業として)存続できません。マグロについては、日本では行政の関係や規制などから、通常の養殖で新たに事業を広げていくのが難しく、拡大には完全養殖が必要という事情もあります」

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加工食品の品目削減し収益改善
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