対話のエンジンは相手への興味・関心

傾聴は、心理的な悩みを解決に導くだけでなく、ビジネスに必須の対人関係をよくするうえでも有効だ。傾聴力を磨けば、いろいろな対人コミュニケーション場面で役立つ。相手を打ち負かそうとする、攻撃的な弁論術以上に、覚える価値の高いスキルといえる。

傾聴するにあたって、とがめるような物言いは禁物だ。「なぜだ? どうしてだ?」と問い詰めても、事態を悪化させるばかり。自分の結論を押しつけるという選択肢も傾聴にはない。ビジネスにおいても、話す相手や相手の事業に興味・関心を持ち続ける「傾聴的態度」は対話のエンジンになるはずだ。

近ごろはリモートワークが広がり、オンライン会議も増えてきた。「無駄な話が減った」「威圧的な会議進行が起きにくい」などと、前向きに評価する声もある。しかし、じかに集まる会議に比べて、やや段取り重視の雰囲気で淡々と会議が進むきらいもある。個々の発言者へ丁寧に耳を傾けるよりも、遅滞なくスムーズにこなす感じの進行が少なくないと聞く。

対面ではなく、ディスプレーに参加者が一覧で見える環境はリアル会議よりも、結論を呼び込む具体的な提案、議事進行に貢献する発言などが歓迎される空気感につながる。「仕事の効率化」には好ましい状況だろう。

一方で、いかにも有益そうな発言が重んじられるムードは、多様な意見をのみ込ませてしまうおそれはないか。ディスプレー上で真正面から見つめられると、口に出しづらい言葉もあるだろう。

本人が「空気」を読んで、封じ込めてしまった言葉は聞き取りようがない。一見、フラットにみえるオンライン会議だが、議論の本筋に沿ってはいないものの、意味はある発言を遠ざけてしまう心配はありそうだ。

会議の効率アップが急がれる中、傾聴というビジネススキルはどうなるのか?

そこがちょっと気になる。

※「 梶原しげるの「しゃべりテク」」は毎月第2、4木曜掲載です。次回は2020年8月13日の予定です。


梶原しげる
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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