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オンライン会議では段取りよく進めたい意識が働きやすい。写真はイメージ=PIXTA

オンライン会議では段取りよく進めたい意識が働きやすい。写真はイメージ=PIXTA

だめなインタビューにはいくつかのパターンがある。最もありがちなのは、質問者がベラベラ勝手にしゃべり、取材する相手の話に耳を貸さないケース。本来は聞き手であるはずのインタビュアーが質問の形を取りつつ、自説をまくし立てたり、勝手に熱くなってしゃべりすぎたりしてしまうことも。この愚行はビジネスの現場でも結構、起きやすい。

刑事が事情を聴取するみたいに、手元のプロフィルを手がかりに、「事実確認」に終始するのも、だめなインタビューの典型だ。記者会見の終了後、当事者が席を離れる、ざわついた状況に紛れ、いきなり声を上げるおかしなレポーターもいる。「○○さんとの間はどうなっているんですか?」「一言、お願いしまーす!」と、質問にもなっていない問いを投げつけるまぬけな芸能リポーターは、雇い主に「仕事しています」とアピールしたいだけの野次馬まがいであり、インタビュアーと呼んではいけない。

本来のインタビュアーとは、対面する取材相手に心からの敬意を払い、興味深い話を引き出し、視聴者や聴取者にわかりやすく伝える「懸け橋」としての役割を担う。

ところが「話を聞く」という作業がまるでできていないインタビュアーが存在する。たとえば、ゲストとして呼んだ人を前にキャスターと称する人が質問を浴びせ倒す。

「~さんは●●なんですよねえ」「好きな時間は△△しているときなんですよねえ」「3日前の夜は××を楽しんだんですよね」

情けないアプローチでお茶を濁す人もいる。事前に渡されたプロフィルや、新聞・雑誌などで取材された記事を読み込むのは最低限のマナーだが、そこで話された会話をもう一度再現するように「~なんですよね」「~ですって?」と問いかけ、まるで「あの記事でしゃべったことをもう一度言ってください」と言わんばかりの話しかけはゲストと聞き手をうんざりさせる。こういう質問は、尋ねられたゲストが答える前から、答えが割れていて、興ざめを誘う。

取材前の下調べそのものは極めて大切だ。様々なメディアで報じられた事実を知り、その人物に関する基礎知識を仕込んでおくことが必要であることも間違いない。

だからといって、それをいちいち確認する態度は、「あぁ、またか」と、目の前のゲストが話す意欲をなえさせ、聞かされる視聴者やリスナーもあきれさせる。取材者の「過去記事」は、本番に向けての戦略を練る一素材として考えれば有用だが、それを確認するだけにとどまったり、そのままなぞったりするような問いかけは、あらためてインタビューする意味をなくす。

せっかく収集した過去記事を「使わなければもったいない」と考えるのは愚かだ。「別メディアではこの質問が盛り上がっていたから、今回のこのトークも盛り上がるに違いない」と期待するが、実際はその逆となりそうだ。答える側から「はい」「その通りです」「よくご存じですね」「いろいろ調べてくれてありがとうございます」「私より知ってますねえ」と皮肉を口にされても仕方がない。

こういう事態は、ビジネスの打ち合わせや会議でも、しばしば起こり得る。間違いを起こしたくないから準備をしておかないとと思う「真面目な人」ほど、想定外の波乱を嫌う傾向がある。あらかじめ「落としどころ」を見定めて、丁寧に誘導の道筋をたどりながら、着地点へ導いていく「予定調和」の運びを好む。

事前に下調べを済ませてあるから、本人はそこそこ分かった気になっている。尋ねられた側がうなずくしかないような、答え方まで組み込んだ質問を投げかけて、思い描いた通りの回答を引き出し、スムーズな段取りでやりとりを進めていく。

確かに見た目の進行は円滑なのだが、こういうケースでは不思議と話そのものが弾みにくい。座を仕切っている進行役以外の人にとっては、「同調」だけを求められているような気がしてしまい、積極的に参加する意欲を保ちにくい。「お客さん」の扱いと感じてしまうわけだ。自分の発言をあらかじめ決めつけられているような印象も受けがちで、発言を盗まれたような気にすらなる。

こういう立場を押しつけられてしまった参加者は、聞かれた通りの返答でお茶を濁してしまいたくなりやすい。望まれていない趣旨の発言を差し控えようとする意識も働くから、おのずと新しい情報や意見を示すことは減る。

結果的にトーク内容には驚きの要素が減り、進行役の思い描いていた青写真に近い枠内で収まりがちだ。参加者は対話のよろこびを感じにくいから、言葉や声が弾まない。要するに、進行役が「こしらえすぎ」たわけだ。

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