アフターコロナの消費者はこう変わる

モノ消費からコト消費へと移り変わった日本の消費者。さらに近年、「非再現性」や「参加性」などを特徴とした「トキ消費」を博報堂が提唱。この流れは新型コロナでどう変わったのか。鍵になったのはサザンオールスターズの配信ライブだ。今後の消費者像やそれに呼応したビジネスモデルの成否を占いながら、「盗めるアート展」など注目のイベントについても解説していく。

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 モノ消費、コト消費の次は「トキ消費」。博報堂生活総合研究所が、新たな消費トレンドとして2017年から打ち出したキーワードだ。モノを持つことへの関心が薄れ、生活者の消費行動の目的が「所有」から「体験」へと変化。だが近年、コト消費という言葉だけでは説明できない事象が起きている、と感じ取った博報堂が、3つの特徴を基に名付けたのがトキ消費だった。

 トキ消費は、以下の特徴から成り立つ。

  1. 非再現性・限定性:時間や場所が限定されていて、同じ体験が二度とできない
  2. 参加性:コンテンツというよりも、その場にいて参加することが目的
  3. 貢献性:参加した成果が目に見えて分かり、貢献していることが実感できる

 例えばハロウィーンの日に渋谷に繰り出し、仲間やその場に居合わせた人とハイタッチを楽しむ、AKB48の総選挙に参加する、アニメ映画『天空の城ラピュタ』の地上波放送で「バルス」の瞬間にSNSでつぶやく。こういった体験がトキ消費と考えられる。

ハロウィーンの聖地化していた渋谷。この光景は当面見られなくなる(写真は18年の渋谷の様子。写真/Shutterstock)
ハロウィーンの聖地化していた渋谷。この光景は当面見られなくなる(写真は18年の渋谷の様子。写真/Shutterstock)

 しかし新型コロナウイルスの感染拡大により、状況は一変した。ライブやイベントはそもそも開催中止となり、自粛によって外に出ることすら難しい状況に。トキ消費は終焉(しゅうえん)し、早くも次の消費トレンドに移ることになるのか、それとも形を変えて残るのか。トキ消費を提唱する、博報堂生活総合研究所の夏山明美主席研究員に聞いた。

 夏山氏が消費トレンドを見る上で注目しているのは音楽・エンタメ業界。「音楽やエンタメは、別業界の先行指標になることが多いため」というのがその理由だ。CDやDVDなどパッケージである「モノ」が売れなくなり、ライブという「コト」で復調。限定ライブなどで「トキ」もリードしてきた。そのライブが自粛に追い込まれ、次の一手をどう打つのか。

 コロナ禍の音楽業界でまず起きてきたのが、無料のライブ配信だ。レディー・ガガやビリー・アイリッシュ、ザ・ローリング・ストーンズら、100人を超える世界のスターが参加した4月の「One World:Together At Home」や、日本でもLUNA SEAがホストとなって開催した、5月のオンライン・チャリティー・フェス「MUSIC AID FEST. ~FOR POST PANDEMIC~」などが挙げられる。医療従事者などを応援するチャリティーの色彩が強かった。

 ただ無料だけではこの流れは続かない。有料に切り替わるうえで象徴的だったのが、6月26日に行われた無観客配信ライブ『サザンオールスターズ 特別ライブ 2020 「Keep Smilin' ~皆さん、ありがとうございます!!~」』だろう。

NIKKEI STYLE

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