悪い例から学ぶ わかりやすい表現を使いこなすコツ『「分かりやすい表現」の技術』

私は毎週、社内向けのメールニュースを作っている。だが、文章で、自分の意図したことを伝えるのはとても難しい。相手に伝わる文書をつくるために、何度も何度も書き直す。そんな私にとって、座右の書といえるのが本書『「分かりやすい表現」の技術』だ。

世の中に出回っている分かりにくい表現を「違反例」とし、改善例と比較させながら、表現する際のコツや心構えを「16のルール」として指南している。本書は10年以上前に出版されたベストセラー『「分かりやすい表現」の技術』(講談社ブルーバックス)の新装版。四六版・二色刷りとなり、視覚的にも事例の分かりやすさがアップしている。著者は表現品質改善の専門家である藤沢晃治氏だ。

整理されていることが重要

そもそも分かりやすい情報とはどんなものなのか。著者は「あらかじめ整理された」情報だと説明している。つまり、いかに情報を整理するかが分かりやすさのポイントなのだ。では整理された情報の具体例を本書より見てみよう。以下の2つの事例AとB、どちらが分かりやすいだろうか。

A)メールがもたらすことは、情報の伝達時間が限りなくゼロになるだけでなく、電話や会議と違い、情報の送り手と受け手が同じ時間を共有する必要がなくなり、しかも電話とは違い、記録が明確に残ることです。

B)メールが主にもたらすことは、3つあります。1つめは情報の伝達時間が限りなくゼロに近づくことです。2つめは電話や会議と違って、情報の送り手と受け手が同じ時間を共有する必要がないことです。そして3つめは、電話と異なり、記録が残ることです。

多くの人がBと答えるだろう。Aは、一文が長すぎる。一方Bは一文を短くして「細かく」区切っている。言われてみれば当然だが、まず「情報を細かくする」ことは分かりやすい表現をするためにきわめて有効な方法だ。また、はじめに「メールがもたらすことは3つ」と大枠を示している。このように最初に「情報の主題」を受け手に提示すれば、情報伝達はスムーズにいきやすい。

「おもてなし」の心で

「わかりやすさ」の神髄を、著者は「おもてなしの心」だと説いている点にも注目したい。テクニックというより心構えの問題だが、分かりやすい伝え方を工夫することは、送り手が「受け手に代わって」情報の整理作業を行うことなのである。つまり、お客様をもてなすに似た意識を持つことが、わかりやすい表現を生み出す第1歩なのだ。

おもてなしの心を持つ際には、受け手のプロフィールを「そそっかしい人」と設定するワザもある。「フールプルーフ」という考え方で、受け手がそそっかしく、「読み間違いをする」という可能性を織り込むものだ。「読み間違う可能性の高い人」に向けて表現を行うことで、自然とより分かりやすくなるように工夫するようになる。

本書のメソッドはプレゼンやメール、報告書を書くなど様々なビジネスシーンで活用できるだろう。なお、この原稿には本書に示されている「具体的な情報を示せ」というルールを意識した。分かりやすかっただろうか。

今回の評者 = 高野裕一
情報工場エディター。医療機器メーカーで長期戦略立案に携わる傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。長野県出身。信州大学卒。

「分かりやすい表現」の技術

著者 : 藤沢晃治
出版 : 文響社
価格 : 1,485円 (税込み)

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