――カードが普及しないのはなぜですか。

持つ必要に迫られていないことが大きいでしょう。10万円給付金で持つ人が増えていますが、普及率は20%に届きません。カードがなくてもそれぞれの手続きはできます。

番号制度への不信感もあります。戦中の強制的な総動員体制のような国家管理を強めるためのものという印象を持たれがちです。これまでもグリーンカードや住民基本台帳カードが試みられましたが、いずれも失敗しました。かつては国民総背番号制と呼ばれた経緯もあり、こうした懸念を払拭する必要があります。

――どうすれば普及しますか。

一つは便利になったと感じられることでしょう。これまでは行政事務の効率化という役所側の利点が強調されていた面があります。カードを持てば時には得をするという仕掛けも必要かもしれません。

その一つが9月に始まるマイナポイントです。マイナンバーカードと連携した電子マネーやQRコードなどでキャッシュレス決済をすると、最大5千円分のポイントを政府が付けます。4千万人分として2500億円近くの予算を用意し、カードの取得を促す狙いですが、費用と効果を見極める必要があるでしょう。

2021年3月には、医療機関や薬局で健康保険証として使えるようになるのもメリットの一つです。診察時の手続きが簡単になり、21年秋からは服用している薬や健診の情報も確認できるようになります。ほかにも運転免許証など用途の拡大が検討されています。ただ、制度への信頼性が十分でないままでは、政府の想定通り普及させるのは難しいでしょう。

ちょっとウンチク

普及率トップは宮崎県

10万円給付金の申請のため、マイナンバーカードを手にした人もいるだろう。発行枚数は4月1日時点の2033万枚から6月1日には2135万枚と約100万枚増え、普及率は16.0%から16.8%になった。

普及率を都道府県別にみると、1位が宮崎県23.2%、2位が東京都21.5%、3位が神奈川県20.2%。市区のトップは宮崎県都城市の36.5%で、職員が写真を無料で撮るなどして取得を支援している。

持っていないと行政サービスが受けられないようにすることも考えられるが、持たない人に不利益があってはならないという行政の公平性の観点から難しい。(編集委員 斉藤徹弥)

■今回のニッキィ
田嶋 理香さん ベランダでシシトウ、バジル、アサガオを育てている。シシトウはナスの味噌炒め、バジルはパスタのトッピングなどに使っている。「育てるのに失敗しないのでお勧めです」

高倉 まなみさん 創作活動が趣味で、伝統工芸や染め物、焼き物、刺しゅう、木工など幅広い。「ようやくワークショップや展示会が再開されつつあるので、参加するのを楽しみにしています」

[日本経済新聞夕刊 2020年7月6日付]

「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。


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