米調査会社のニールセンは2020年4月30日~5月2日、今年2度目となる消費者の行動に関する大規模な意識調査を世界各国・地域を対象に実施した。日本に関してはネットショッピング(EC)や飲食デリバリーの利用率は、3月に実施した1回目より高まっている。ただ、消費者の意識まで変わったかと言うとてそうとも言い切れない実態も浮かび上がる。本稿では、その深層に迫る。

米調査会社のニールセンは、2020年3月中旬に続き4月30日~5月2日に2回目となる大規模な消費者調査を世界各国・地域で実施した。そこから浮かび上がってきた日本人の行動変容の実態とは…(写真/Shutterstock)
米調査会社のニールセンは、2020年3月中旬に続き4月30日~5月2日に2回目となる大規模な消費者調査を世界各国・地域で実施した。そこから浮かび上がってきた日本人の行動変容の実態とは…(写真/Shutterstock)

 ニールセンが2020年3月中旬に実施した1回目の調査結果については、「世界70カ国調査で見えた“アフターコロナ”時代の新・消費者像」で紹介した。新型コロナウイルスの感染拡大によって、オンラインショッピング利用の増加や、外食・レジャーの減少など、消費者の行動について多くの変化が見られたことを述べた。その後の4月7日に緊急事態宣言が7都府県に対して発令され、16日に対象が全国に広がった。

 2回目となる調査は、まさに緊急事態宣言を発令している真っただ中を狙って日本を含む多くの国や地域で実施した(i)。政府が「3密」「接触8割減」「新しい生活様式」といったキーワードを使って国民に強く協力を呼びかけているタイミングであり、法的強制力がなかったにもかかわらず宣言前に比べて都市部の人出が減少していたためだ。緊急事態宣言前に比べてさらにどう行動変容したのかを浮き彫りにしようと試みた。今回は大規模調査から日本のデータを切り出して分析してみたい。前回同様、調査は全国18歳から65歳までの526サンプルを対象に行っている。

緊急事態宣言前から激変した「買い物」「外食」行動

 まず、前回の調査で顕著に行動が変わった買い物に関して見ていく。オンラインショッピングの利用頻度が増加したと回答した人は全体の44%となった。3月には30%だったので、約1.5倍に増えた。一方「スーパーマーケット」「コンビニエンスストア」「ドラッグストア」といった“オフライン”の買い物については、全体的に頻度が減少している。

買い物に関する消費者の行動の変化
買い物に関する消費者の行動の変化
オンラインショッピングの利用頻度が増加したと回答した人は全体の44%。3月は30%だった

 例えばスーパーマーケットの利用が減ったと回答した人は43%で、前回より19ポイント増えた。コンビニも20ポイント、ドラッグストアも17ポイント増加しており、ECシフトが一層進んだことが結果から読み取れる。

 外食についての行動はどうか。自宅で調理する頻度が増えたと答えた人は全体56%。前回は32%だったのでプラス24ポイントとなり、自炊派が多くなったことが分かる。出前・デリバリーも同様で20ポイント増となり、持ち帰り・テークアウトも19ポイント増。それぞれほぼ倍増している。9割近くが外食を控えているとし、大半の人は巣ごもりによって食生活を変えざるを得なかったことが分かる。

外食に関する消費者の行動の変化
外食に関する消費者の行動の変化
自宅で調理する頻度が増えたと答えた人は全体56%。前回は32%だったのでプラス24ポイントとなった

 ただこうした数字を額面通り受け止め、日本人消費者がその意識まで激変したと考えるのは早計だ。というのもこうした行動の変化は、単に営業している店舗や施設が少なくなって物理的に行くことができなくなった一時的な影響であるかもしれないからだ。新型コロナウイルスに感染するリスクを減らすべく行動を控えただけかもしれない。

 そもそも日本の消費者は、他国に比べて変化に対して保守的なところがある。調査で浮き彫りになったのは表面的な変化かもしれず、慎重に見極めなければならない。実際、新型コロナウイルスに自分が感染することを「非常に心配している」と答えた割合は前回の調査では29%だったのが47%に、家族が感染することを「非常に心配している」人も42%から58%へと増加している。感染拡大の影響が沈静化するのに1年以上かかるとした人も、前回から約3倍に増えている。調査したタイミングでは、深刻な状況を消費者が認識していたことがよく分かる。

新型コロナウイルス感染に対する懸念
新型コロナウイルス感染に対する懸念
新型コロナウイルスに自分が感染することに「非常に心配している」と答えた割合47%。前回の調査では29%だった
ウイルスが沈静化することに対する見通し
ウイルスが沈静化することに対する見通し
感染拡大の影響が沈静化するのに1年以上かかるとした人は、前回から約3倍に増加

NIKKEI STYLE

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