校長に聞く、コロナで変わる教育 自律学習IT後押し「これからの学びのカタチ」 前編

インタビューに答える工藤勇一校長(左上)と日野田直彦校長(右上) 聞き手はU22 桜井陽
インタビューに答える工藤勇一校長(左上)と日野田直彦校長(右上) 聞き手はU22 桜井陽

新型コロナウイルスの影響で全国の学校現場は大きな混乱に見舞われています。学びを止めないために、学校や保護者、そして児童・生徒は今どのように行動すればいいのか。今注目の2人の校長への公開インタビューで探るオンラインイベント「これからの学びのカタチ」を5月30日に実施しました。当日の模様を2回にわたってお届けします。(聞き手はU22 桜井陽)

登壇者
工藤勇一氏(学校法人堀井学園 横浜創英中学・高校 理事・校長)
日野田直彦氏(武蔵野大学中学・高校校長兼武蔵野大学付属千代田高等学院校長)

桜井 全国の学校が迷いながら、新型コロナウイルスへの対策を進めています。緊急事態宣言が解除され、いわゆるコロナ前の「正常化」に向けて学校はどのように動き出したらよいのでしょうか。

日野田 「正常化」と言いますが、今まで通りに戻すということが前提の議論は、もはやナンセンスだと思っています。教育現場のIT化を契機に、次のステップに行かなければなりません。そうですよね?工藤先生。

桜井 工藤先生、そもそも、ITを使うとどのような教育ができるのですか。

工藤 私がこの春まで校長を務めていた千代田区立麹町中学のことをお話すれば、ITは技能や知識を習得するのにはとても便利でした。教室で一斉に情報を伝達して暗記させる従来のスタイルは、ものすごく非効率なんですよ。AIを使った学習ソフトによって、数学の習得時間を大幅に短縮できましたから。このとき大切なのは、黙々とAIで勉強するのではなく、生徒同士で教え合ったり、分からなかったら先生を呼んだり、雑然とした雰囲気の中で臨機応変に学んでいくことです。ITはあくまでツールにすぎません。

日野田 同感です。ITは手段であって、目的ではないですよね。これを使ってどのように自主性のある個人を育成するのかに焦点を当てるべきです。普通に教室で教師1対生徒40で授業している限りは、授業中に手を挙げたりとか、わからないことをわからないですとはなかなか言いにくいです。そういうのをオンラインを通じて素直に積極的に発言できるようになることが望ましいです。教育も目的は本来こちらですよね。もちろん、その前提としてインフラ整備も重要で、全国の小1から高3までの生徒にWi―Fiとパソコンを渡して通信費は国が持つというような、大胆な政策があってもいいと思います。

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「教員も変わっていく時代が来た」