役員を「ワンチーム」に 挑戦する会社に変える打開策『なぜ、それでも会社は変われないのか』

以前から、「VUCA」という言葉が注目を集めている。VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字からとった言葉だ。現在、新型コロナウイルスの問題が社会経済に大きな影響を与えているが、まさにVUCAの時代であると言える。

先が見えない状況が続く中で、企業に求められるのは恐れずに変化していく姿勢だ。本書『なぜ、それでも会社は変われないのか』では、従来の日本企業にありがちだった予定調和に物事を進める「調整文化」から生まれ変わるための方法を、「挑戦文化」をキーに解説。企業風土・体質改革を専門に行うコンサルタントである柴田昌治氏が、会社の変革ストーリーとともに語っている。

「挑戦文化」の推進力とは

失敗を恐れず、試行錯誤を続け、変化に果敢に取り組み、ゆらぎながらも進化を図る文化。これが著者の言う挑戦文化である。

挑戦文化の推進力となるのは、社長と役員を含めた「経営陣のチーム化」だ。経営陣が対話を積み重ね、挑戦し、答えに近づく経営を行えば、その下にいる部下も自然と感化される。しかし、ほとんどの役員は、自分の持ち場や領域以外のことにあまり関心を持っていないために、全社的な問題を考えることができないと著者は指摘。大切なのは、役員一人一人が、経営全体を見る意識を持ち、社長の問題意識を共有することだ。

役員が「チーム」として一枚岩になる方法として、「役員合宿」が紹介されている。事前に役員の問題意識をヒアリングし、メンバーに共有する。「あの人も同じように思っていたのだ」という共感を生み出し、腹を割って議論ができるようにするのだ。さらに合宿では職歴以外の自己紹介などをかなりの時間を割いて行う。一人の人間として互いを理解し、役員たちが「仲の良いケンカ」ができるようになるのが理想的だ。

「何のためにやるのか」を問う

さらに、挑戦文化をつくり上げるためには組織全体に共通の価値観が行き渡ることが必要だ。本書では、挑戦文化において大切な「5つの価値軸」が明示されている。めざすものを持つ、当事者になる、事実・実態に即す、意思決定のルールを共有する、などが紹介されているが、なかでも重要な点は「意味・価値を大切にする」ということだろう。

これは、「何のためにやるのか、どういう意味があるのか」を考えるということだ。多くの組織人は課題に対し「どうやるか」という手段に重点を置きがちだが、そもそもこの仕事が何のためにあるのか、を問う姿勢が必要だという。

つまり「How」ではなく「Why」を考えるのだ。目の前の仕事に対し「なぜやるのか」を問い続けるのはある意味しんどいことだ。与えられた課題に対して試行錯誤をしているほうが、仕事を「やっている感」が得られる。だが、それでは思考停止に陥りやすいのだ。仕事の本質的な価値を捉えなおす姿勢なくしては、挑戦すべき「新しい課題」も見つからないだろう。本書はマネジメント層に向けて書かれてはいるが、VUCA時代を生きる個人のビジネスパーソンにとっても羅針盤になりそうだ。

今回の評者 = 倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

なぜ、それでも会社は変われないのか 危機を突破する最強の「経営チーム」

著者 : 柴田 昌治
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,760円 (税込み)

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