1位は瀬戸内芸術祭 注目のアートフェス、トップ10
地域再生や人々をつなぐ活動として注目されているアートフェスティバル。今年は瀬戸内国際芸術祭など数年に一度開催される有名フェスティバルが同時に開催される当たり年だ。アート初心者でも、芸術と観光が楽しめるイベントを専門家に選んでもらった。
◆人気の火付け役 アートフェスティバル人気の火付け役。瀬戸内海にある12の島々と2つの港を会場に、フェリーで巡りながら作品を楽しめる。「旅行と芸術鑑賞を融合させ、人々を街から連れ出した功績は大きい」(山田祐子さん)。3年ぶり2回目を迎えた今回は、新たに5島が加わった。会期は春夏秋の3シーズンで、今年は既に約70万人が訪れた。
主要会場である小豆島や、草間弥生の作品が展示される直島などは、既に観光地として有名で見応えもたっぷり。「島に流れる空気もアートの一つです」(林大輔さん)。会場は広くフェリーも混雑が予想されるため、事前に行動計画を立てるとよい。
(1)10月5日~11月4日※(2)10~17時※(3)シーズンパスポート4500円(4)高松港から直島へ高速旅客船で25分(5)総合インフォメーションセンター(電)087・813・2244
◆旬の作家を網羅 演劇やダンスパフォーマンスで街を彩る国内最大級の国際芸術祭。国内外から100組以上のアーティストが参加し、「旬の作家を網羅している」(住吉智恵さん)。3年に1度開催するトリエンナーレで、2回目の今回は「揺れる大地」をテーマに掲げ、震災後の世界に関する作品を多く扱う。岡崎市も加わってパワーアップした。都市部に会場が集中し、効率よく見て回れる。
演劇やオペラなどの舞台公演のほか参加者1000人がちょうちんで街を照らすイベント=写真=もある。
(1)8月10日~10月27日(無休※)(2)会場により異なる(3)フリーパス3500円、普通チケット1800円(4)地下鉄「栄」から愛知芸術文化センターへ徒歩3分(5)事務局(電)052・971・6111
◆時が止まったよう 山村集落や商店街、温泉街など6エリアを舞台に113組の若手作家らの現代アートがあふれる。鉄道駅跡や廃校自体を利用した展示もあり「時が止まったような雰囲気を感じられる」(菊地由香さん)。ビエンナーレは2年に1度開かれる美術展覧会の意。会場へは車利用がお薦め。土日祝日は日帰りバスツアーもある。
(1)9月13日~10月14日(木曜定休)(2)9時30分~17時(3)1000円(4)JR中之条駅周辺など(5)事務局(電)0279・25・8500
◆多ジャンルが共演 十和田市現代美術館を中心とする市街地と奥入瀬渓流、十和田湖の3カ所で開催。奈良美智による音楽祭など「多ジャンルの共演が楽しめる」(白坂ゆりさん)。
(1)9月21日~11月24日(月曜定休、祝日の場合開催で翌日休)(2)9~17時※(3)2000円(4)JR七戸十和田駅から十和田市現代美術館へバスで40分(5)事務局(電)0176・20・1127
◆能楽などイベント目白押し 山口情報芸術センター(YCAM)が主催し、坂本龍一らの展示空間や野村萬斎の能楽などイベント多数。コロガルパビリオン=写真=は子どもたちに人気だ。
(1)11月1日~12月1日(火曜定休、祝日の場合開催し翌日休)(2)10~20時(各種イベント開催時間は異なる)(3)原則無料※(4)JR山口駅から徒歩25分(5)山口情報芸術センター(電)083・901・2222
◆ピクニック気分で 六甲山での野外展示。作家39組の作品をピクニック気分で訪ねられる。「都市部からのアクセスが良く、1日で全部回れる」(小吹隆文さん)。
(1)9月14日~11月24日(無休)(2)10~17時※(3)1800円(4)六甲ケーブル「六甲山上」すぐ(5)インフォメーション(電)078・891・0048
◆まちの再生がテーマ 「アートによるまちの再生」をテーマに2008年から毎年開催。今年はアジアから多くのゲストアーティストを招き、高架下などに作品を並べた。
(1)9月14日~11月24日(月曜定休、祝日の場合は翌日)(2)11~19時(3)700円(4)京急線「日ノ出町」から「黄金町」間の高架下など(5)黄金町エリアマネジメントセンター(電)045・261・5467
◆被災地の復興願う 東日本大震災で被災した温泉町の再生を願い、若手作家ら約30組が参加する。
(1)9月6日~10月14日(無休※)(2)9~17時(3)無料(有料の施設も)(4)JR福島駅よりバス45分(5)つちゆ芸術万華郷実行委員会(電)050・5857・8454
◆作家が長期滞在し作成 今年で15回目。アーティストらが地域に長期間滞在して現代アートの作品を作る。
(1)10月27日~11月4日(無休)(2)10~17時(3)無料(4)JR徳島駅からバスで60分(5)実行委員会(電)088・676・1177
◆平和のメッセージ発信 アートで訴える平和。
(1)7月20日~10月14日(無休※)(2)9~17時※(3)共通券1900円(4)路面電車「紙屋町東」からひろしま美術館へ徒歩5分(5)広島県立美術館(電)082・221・6246
表の見方 数字は選者の評価を点数化。開催地域。(1)会期(2)開催時間(3)入場など当日券の大人料金(4)主な行き方(5)問い合わせ先 ※印は施設や展示などで例外があるもの。写真は2位「ウルトラ・サン・チャイルド」の写真以下、主催者提供。作家と作品名、写真撮影者。
■今年は当たり年 芸術も旅も満喫
もとは海外発祥のイベントで、日本では2000年代から広がり始めた。アーティストは地域の自然や文化を学び、観光客は会場周辺を歩き、作品を目にして地域への理解を深める。
今回ランキングに入ったフェスティバルに出品されている作品は、難解といわれる現代アートが多い。だが楽しむコツは「地域をたくさん歩き、まずは旅を満喫すること」と美術ライターの小吹隆文さんは話す。五感で自由に感じることが大切だ。
展示作品全てを見たい気持ちはわかるが、無理をせず、気になった作品を中心に鑑賞計画を立てる。交通が不便な地域が多いので、事前に移動手段の確認をしておこう。
◇ ◇ ◇
調査の方法 全国のアートイベントに詳しい専門家12人の意見から、今秋に開催する主要な32イベントを選び、展示の工夫、展示規模、地域との親和性などから評価。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)
市原研太郎(美術評論家)▽金島隆弘(アートプロデューサー)▽菊地由香(旅行ガイド「ことりっぷ」編集部)▽小吹隆文(美術ライター)▽白坂ゆり(アートライター)▽住友文彦(アーツ前橋館長)▽住吉智恵(アートプロデューサー・ライター)▽林大輔(楽天トラベル)▽福島佳代子(ウェブマガジン「artscape」)▽山田祐子(井門観光研究所)▽吉田宏子(ハモニカブックス)▽鷲田めるろ(金沢21世紀美術館キュレーター)
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