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テレビ会議では声の出し方が大事になってきた。 写真はイメージ=PIXTA

テレビ会議では声の出し方が大事になってきた。 写真はイメージ=PIXTA

テレビ会議の機会が増えたが、しゃべりの技術は、オンラインの便利さにまだ追いついていないようだ。私も打ち合わせで、テレビ会議に臨むことが増えて、戸惑いやいらだちを感じることが多い。

個人的に最もうっとうしいと思うのは、発言のかぶり(タイミングの重複)だ。こちらが話そうと思った間合いで、別の人が話し始めたり、同時に2人以上が口を開いたりと、言葉が入り乱れがちだ。

かぶりが頻発するようになって、あらためて気づいたのは、人は会話に際して、互いに「間(ま)」を見計らっているということだ。他人の発言を邪魔しないよう、タイミングを見極めて、言葉を発している。しかし、テレビ会議の場合、空気がつかめないせいで、かぶりが起きやすい。誰が次にしゃべりそうかを、表情や呼吸で見定めるのが難しいからだ。

さらに、音声が伝わる際のディレイ(遅れ)が輪をかける。1拍ほど遅れて聞こえる、腹話術のような伝達の場合、かぶり具合が深刻になりかねない。ちょっと笑ってしまうほどの「もろかぶり」になることだってある。

一般的な会議であれば、言い直したり補足したりといったフォローが可能だろう。しかし、就職・転職の採用面接のような、一発勝負の場合、ちょっとした「伝達ミス」が明暗を分けてしまいかねない。近ごろは採用面接でも最終段階までオンラインだけで進むケースが珍しくないという。テレビ会議での表現力が、大げさではなく、人生を変える時代になりつつある。

既に世の中ではこうした変化を受けて、オンラインでの表現スキルを指南するサービスが登場していると聞く。職業アナウンサーであり、「しゃべりテク」を掲げる者として、いくつかのコツを提案してみたい。

セミナーや講演もオンラインに切り替わるとあって、私のところにも、テレビ会議形式の「1対多」式トークイベントを指南するという申し出があった。物は試しと、参加してみたが、これが大失敗だった。指導の中身ではなく、回線設定やソフト操作のほうで不手際や不具合が相次いでしまい、うまく講義が進まなかったのだ。

私は技術方面にはとんとうといが、これでは「戦う前から負け」だ。面接や会議の開始時刻の間際になって、接続を準備するのは、思わぬトラブルであたふたするリスクを呼び込んでしまう。落ち着いた気持ちでしゃべるためにも、回線確保やソフト起動は余裕を持って済ませておこう。

話し方に関して、大づかみに意識しておきたいのは、「期待を持ちすぎない」という点だ。リアルの会議に比べると、音声はクリアではない。声が濁ったりかすれたりする。途切れることすら、割としばしば起こる。せっかくの発言が先方に全く届かない悲劇も起こりえるのだ。

表情や身ぶりも伝わりにくい。本人が醸し出すムードや、なんとなく伝わる人柄なども、数センチ程度の四角い枠の中からは感じてもらいにくいだろう。要するに、表現力がプア(貧しい)なのだ。

だから、発言者には忍耐や妥協が求められる。リアル会議のような伝達力を期待せず、狭い音域の範囲内でも伝わるような表現を選ぶことになる。出来損ないの楽器を演奏するようなイメージだ。

具体的には「文章を短く区切る」「言葉を言い切る」「語尾をはっきり」「声を張る」などの発語テクニックが役に立ちそうだ。いずれも以前から「しゃべり方教室」のようなところで手ほどきされてきた事柄だが、テレビ会議の本格化に伴い、徹底する意味が増したといえるだろう。

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