おもてなしは受け継いでこそ 加賀屋流の人づくり
加賀屋相談役 小田禎彦氏(12)最終回
2014年4月に長男の與之彦氏(右から3人め)が社長に就任した。右から5人めが本人
石川県内にとどまらず、日本の旅館の代表格である加賀屋(同県七尾市)。3代目の社長で現取締役相談役の小田禎彦氏は、旅行業界紙の「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で長く連続日本一に選出されたサービスの礎を築いてきた。小田氏の「仕事人秘録」の最終回となる第12回では、次世代への継承について語ります。
◇ ◇ ◇
会長に退き、長男を社長に
2014年4月、会長から相談役に退く。社長のバトンは弟の孝信氏(現会長)から長男の與之彦氏(46)へ。世代交代を進める。
與之彦は商社や外資系ホテルでの勤務を経て、1999年に入社した。40歳までは日本青年会議所で活動し、全国で人脈を築いてきた。いつトップを引き継ぐべきか。5年間ほど、考え続けていた。
景気は上向きで、いい船出ができる。開業する北陸新幹線に向けた準備を本人の主導でやらせたい――。14年の年明け、孝信と相談して交代を決めた。何よりも、インターネットが理解できない高齢の人間にトップが務まる時代ではない。今まで固定客や旅行会社が掘り起こしてくれたお客が中心だったが、ネット予約も増えている。
体制変更から1年近くたつが、つくづく継承は難しいと感じる。任せたいが、つい出しゃばってしまう。自分でやりかけた仕事は気になるし、外部の人から「相談役にぜひ」と頼られる場合もある。息子は口出しされていやだろうな、と分かりつつ手を出すので、時に小競り合いになる。今になって、父の心境が分かるようになった。